個別原価計算は本当に個別なの?

カイゼンコンサルタントのKANSINノート, 製造業

こんにちは。シナプスイノベーション 営業本部 中里です。
前回の記事「原価計算の個別と総合とは?」から2回にわたって、「個別原価計算」についての記事をお送りしています。
今回は、個別原価計算って本当に「個別」なんでしょうか? というお話です。

個別受注生産でも原価を比べられる

個別受注生産の場合、ある受注で生産した製品と別の受注で生産した製品とは違うモノ。
だからそれぞれ個別原価計算をする。ふたつの原価を比較することはできない。
そう考えている方も多いかと思います。

ですが、いくら個別受注生産といっても、同じ工場で、今日は特注のオーブンを製造し、明日は特注のケーキを製造するなんてことはあるでしょうか?

もしそうならば、確かに、オーブンの原材料は鉄板やパイプやねじ、ケーキの原材料は小麦粉に砂糖に卵、どちらが高いかなど比較できません。
作業にしても、オーブンは金属を曲げる、溶接する、塗装する、ケーキは混ぜる、焼く、飾り付けるなどなど、どちらにどれだけ時間とお金がかかったかを比較することはできません。
当たり前といえば当たり前の話ですよね。

ですがこんなことは現実にはめったにないでしょう。
経営の多角化でこのように極端に違う製品を作っている場合には、そもそも事業を分けて管理していて、オーブンとケーキの原価を比較する必要などないはずです。

では、同じ事業の中で少し違うものを作っているとしたら、原価は比較できるでしょうか?
私は、製品を原材料や作業に細分化すれば、比較できると考えています。

例えば、鉄製建築資材の製造業を想像してみましょう。

この会社では、吊り橋の鉄骨部品と高速道路の鉄骨部品を作っています。
鉄骨部品といっても、それぞれ見た目も大きさも違うでしょう。
でも使う原材料は、鉄板、パイプ、ねじなど、同じものです。
作業も曲げ加工、溶接、塗装など、同じです。

同じ原材料で違うモノを作るのですから、同じ原材料を違うだけ使っているでしょう。
これなら、吊り橋部品の原材料にいくら、高速道路部品にはいくらかかったのか計算できます。
作業も、同じ作業にそれぞれ何分かかったのか割り出せば、比較できます。

できあがったモノ同士は比べようがなく見えますが、原材料同士、作業同士なら比べられるのです。
これらひとつひとつを組み合わせれば、製品全体の原価も比較できるはずです。

PDCAに欠かせない差異分析

個別受注生産、個別原価計算であっても、受注ごとの原価を比較することはできる。
そうだとして、ではなぜわざわざ比較するのかという話になります。

原価と原価を並べて、それから何をするでしょうか?
「差異分析」です。要は、差を見つけ、なぜ差があるのか考えることです。

まず、実際原価と見積原価の比較が考えられます。

モノを作って売るときには、受注前に原価の見積をして、そこに利益をのせて、注文にかかる見積金額としてお客様に提示します。
この見積上の原価と実際にかかった原価を比較して、思ったより原価がかかって利益が少なくなっていないか、あるいは、原価が安く利益が多くなっていないかを分析します。

でもこれなら、個別の受注ごとに原価がわかれば、十分対応できそうな気もしますね。

しかし実際には、そもそもなにを元に見積原価を割りだしたのか、精度が高いのか低いのか、明確でないことが多いようです。
ベテランの方が経験と勘で見積もったり、過去の似たような製品の原価を参考に見積ったりして、それが実際の原価と大きく乖離しなければ、利益は確保できたとしてよしとする。それで終わりにしてしまうこともままあるのではないでしょうか。

複数の受注の原価を比較することができれば、「過去の似たような製品の原価」を、もっと統計的に分析することができます。そうなれば、見積原価の精度は上がるはずです。
見積原価の精度が上がれば、利益管理の精度も上がります。

利益管理というコトバを使いました。
原価の分析を行う大きな理由は、利益向上です。
利益向上のためには、原価低減が必要です。

原価低減のための分析には、見積原価の他に、もうひとつ、目標となる原価、つまり標準原価との比較があります。
どれだけの原価で作れたかを、どれだけの原価で作れるはずかに加えて、どれだけの原価で作りたいかとも比較するわけです。

一般的に、個別受注生産では標準原価管理はできないと思われています。
受注ごとに異なる製品を作る以上、あらかじめ標準を決めることはできないというのです。

しかし私は、個別受注生産でも標準原価は設定できると考えています。
原材料や作業などの原価要素ごとに、過去の実績や利益計画などから標準値を割り出し、受注ごとに見込まれる部品の量、作業時間等を反映すれば、標準原価は設定できます。

標準原価を設定したら、実際に製造を行い、実際原価との差異を分析します。

差異には、悪い差異と良い差異があります。
悪い差異なら、作業に問題があるのか、原材料の使い方に問題があるのか、原因を深堀し、どうすればよくなるのか対策を考えます。
良い差異なら、何が良かったのか、どうすれば継続できるかを考えます。

分析の視点は、ほかにもいろいろとあります。
例えば、期間ごとの変動の分析も可能です。
直接材料費、直接労務費、直接経費などの原価要素ごとでの月別比較や、前年対比などなどです。
製品ごとの原価だけでなく、期間比較が重要な場合もあるでしょう。

新製品の設計から開発、販売までを通して、原価と利益の目標を計画することを、「原価企画」と呼びます。
企画を立てて、実行して、結果と企画にどのくらい差があったか、どうして差があったか考え、この差を縮めるために次の企画をする。更には企画自体のレベルを上げていく。
PDCAですね。

個別受注生産だから原価企画はできない、見積原価もあいまいになっている。
それでいいわけはありません。
どんな生産形態でも、PDCAを回し、継続的に原価低減を進めることがとても重要です。

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システムを使って原価のPDCAを回したい。そうお考えの方がいらっしゃいましたら、どうぞ製品紹介ページをご覧ください。

 

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この記事を書いた人

中里 真仁(なかざと まさひと)

宝塚歌劇をこよなく愛する生産管理&経営管理コンサルタント。
神戸生まれの神戸育ち。海を眺め、山へ登ることが好き。
関心あること、感心したこと、歓心を得た事を綴ります。

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