アフターコロナの社内電子化

働き方改革, 仕事効率化, リスクマネジメント

シナプスイノベーション 法務室です。

新型コロナウイルスの蔓延に伴う緊急事態宣言やそれに伴う外出自粛・可能な限りの在宅勤務の要請が、つい先日まで発出されておりました。

この際、「書類に押印をしなければならないからやむを得ず出社しなければならない」「けれど、そもそも押印をするためだけに、感染のリスクを冒して出社すること自体合理的なのか」という問題点が浮かび上がりました。

緊急事態宣言は5月25日に一旦全面解除されましたが、引き続き「新しい生活様式」に基づくテレワークの推奨がなされている状況です。
これを受け、押印を伴う書類や業務につき見直しを進めておられる会社様や検討を開始されている会社様も一定数おられることと拝察いたします。

そこで、本ブログでは、押印を伴う書類・業務を見直すにあたっての法務的な着眼点を簡単にまとめてみました。

見直しの対象となる文書の例と、3つの着眼点

押印を伴う文書としては、たとえば以下のようなものが考えられるかと思います。

  • 請求書
  • 見積書
  • 契約書

これらの文書の押印をなくして電子化する、というのが業務の見直しに当たり1つの方向性となってきます。
その際には以下の3つの観点が必要になってくるかと考えられます。

  • その文書に押印がそもそも必要なのか。
  • 当該文書の内容が会社の意思表示であることを証明する方法として、押印によらなければならないか。それ以外の方法はあるか。
  • 文書の偽造や不正防止という観点から見て、押印という方法によるメリットやデメリットはないか。代わりの方法はないか。

その文書にそもそも押印は必要なのか

押印とは、その文書が権限ある者により作成されたかどうか(文書の成立)を証明するための方法の1つです。

そのように考えると、そもそも「体裁を整えるため」「(なんとなく)格好をつけるため」に押印をしているだけのような場合には、そもそも印章による押印をわざわざ行う必要はないのでは、とも整理が可能です。


現に、大手通信会社等の請求書をご覧になると、請求書に印鑑が押されていない、もしくは印影のような記載はあるがあくまでプリントアウト表示したものに付いたデザインに過ぎないものも見つかるかと思います。

当該文書が会社の意思表示であることを証明する方法として、押印によらなければならないか
それ以外の方法はないか

もっとも、契約書のように、ある会社の内部の作成権限がある者に作成されたことが大事、と一般的に考えられる文書については、そのような証明方法を全く設けない、とすることは出来ません。
ただ、その方法が印鑑による押印と文書への印影の表示に限られるかというと、そうではありません。

日本の場合、

  1. 『署名』という方法だと「私の代わりに私の名前でサインしておいて」という調子で、自分で署名しないケースも多い(『署名は自署』というビジネス慣行がない)とされていること
  2. 印章による押印の場合、特に実印などの場合には、自分の印鑑をみだりに他人に預けて押印させることはない、というのが一般的な慣行や経験則からいえること

の2点から、押印という方法によるのが一般的です。
しかし、署名による文書の成立の真正が排除されているわけでは全くありません。

現に、欧米を中心とした海外企業との取引の場合には、契約書の原本に押印ではなく署名を行うことが一般的です。

また、このような取引の場合、個別取引については、お互いに距離が遠すぎて原本のやり取り自体が煩雑になることもあります。そのため、一方当事者が契約書原本に署名してそれをPDFファイル等で送信し、もう一方の当事者がそれを印刷したものへ署名の上再度PDFファイル等で返送して、両者の署名があるものをもって原本と同様に扱う、としている例も散見されます。

このような運用は、日本の法律でも明文で排除されているわけではなく、国内取引についても契約書をこのような方法で行うことを検討してみても良いケースはありうるか、とも思われます。

文書の偽造や不正防止という観点から見て、押印という方法によるメリットはないか
代わりの方法はないか

そうはいっても、実際には日本の国内取引での契約書を、署名データのPDFによるやり取りで行うことについては、文書の偽造や不正防止、という観点から見てどこまで許容すべきか、という問題点は残ることになります。

たとえば、以下のようなケースを考えていただけると分かりやすいかと思います。

  • 署名・押印がなされたPDFファイルのページはそのままに、納入品や契約金額、納期等が記載されたページを編集ソフト等で差し替えられてしまった場合
  • 以前の契約書で取り交わした署名部分のデータをコピーされ、全く別の契約に使われた場合

海外との取引で、取引会社数が限定されているような場合には、このようなケースはめったに起こらないものとして、リスクを受け入れつつ進める、ということも現実的な選択肢にはなりえます。しかし、国内取引全般で上記のようなリスクを許容することは、なかなか難しいか、と思われます。

「押印がされた紙媒体の文書」に一定の意味合いが生じてくるのは、この辺りになります。物理的な文書の差し替えや印章の偽造、ということも考えられなくはないのですが、現実的には、電子データ上の内容差替えや署名の偽造よりは、はるかに困難な場合が多いです。

※そもそも紙媒体の契約書原本の場合、「各当事者で原本を1部ずつ保管する」とされているのが一般的です。自分の手元の文書は差し替えられても、相手方の文書まで差し替えるのは、その相手方担当者まで巻き込んだ形での不正でもない限り、なかなか難しいでしょう。

アフターコロナは「電子署名」が主流に?

もちろん、現在の日本でも個別取引における発注で電子的な方法が広く活用されている例はあります。


たとえば、大手企業による仕入先への発注手続の場合、EDI(Electric Data Interchange)での受発注システムを導入されている会社も多いです。
この場合には、システムが適切に構築されている限りにおいて、偽造や不正行為のリスクは低減したうえで、電子的に取引を実施出来ることとなり、署名・押印、ひいては契約書・注文書を不要とすることも実現されています。

EDIの導入実例は、先ほど上げた大手企業による仕入先への発注のように、一定の類型に収まる取引が反復・継続して行われるケースが大半です。

そのようなケースの取引以外の場合には、別のやり方で偽造・不正防止というリスクを低減しつつ、署名(もしくは押印)を電子化できないか、を模索していくことになります。


そこで改めて脚光を浴びることになるのが「電子署名」です。日本でも「電子署名及び認証業務に関する法律」という法律が2001年に成立(2014年6月に最終改正)しています。同法やその規則では、偽造・不正防止の技術的手段を設けることも要件とされています。これらで定められた要件を遵守することで、電子署名を利用したセキュリティの高い契約システムを用いることが可能となっています。

これを踏まえて、コロナ騒動の前からも、いわゆる「リーガルテック」を提唱されるソフトウェアベンダによる電子契約サービスの立ち上げ・展開が近時進んでいた、という状況です。

おわりに

上記のような外部の電子契約サービスを利用するか、もしくは自社で電子契約を利用した社内システム・フローを構築したり、EDIの導入を検討したりされる場合、業務フローの変革が必要な点や、そのコストをどうするか、といった問題が生じることとなります。

ですので、昨今の新型コロナウイルス禍を受けて大多数の企業が直ちに電子契約への早急な切替を実施するかといえば、(システム開発に関わる会社の人間としてはやや遺憾ながら)なかなかそのようにはならない、というのが現実ではあろうかと思います。

しかし、この度の新型コロナ禍を受けて、「押印を紙で行うためにその業務を行う社員を感染リスクにさらすことを、はたしてどこまで許容することができるか」という問題意識が、社会である程度幅広く共有されるようになったのも事実です。

また、自社での電子契約システムの導入が当面ないにしても、取引先となるお客様の方がいち早く導入されるケースも十分想定されます。

少なくとも、そのようなケースを踏まえての社内規程等の整備(ソフトウェア以外の部分の整理)はこの機会に検討されてしかるべきですし、EDIやBRM(ビジネスルールマネジメント)などの、既に広く社会で用いられているシステムによる業務のペーパーレス化による対応も、視野に入れておくべきか、と考えています。

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