4月から始まる有給取得の義務化

シャローシのお仕事, 働き方改革, 人事・労務

 

 

働き方改革関連法案の成立は、70年ぶりの労働法大改正と言われています。
(ちなみに70年前に何があったかというと、「労働基準法」「労働関係調整法」そして「労働組合法」のいわゆる労働三法の成立です)

 

この法案の目的の1つとして長時間労働の是正が掲げられており、その施策の1つである「年次有給休暇の時季指定義務」が来年4月1日より施行されます。
今日はこの法案施行後の年次有給休暇制度について、まふゆさんをお迎えしてお話したいと思います。

 

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浅尾「早速ですがまふゆさん、4月から始まる有休の義務化は知っていますか?」

 

まふゆ「年に最低5日は消化するように、というお話ですよね?
新聞やニュースで見ましたが、私自身は毎年間違いなく5日以上使っているのであまり関係ないかな、と思っていました。
ただちょっと気になっているのが、5日分は会社が取得する日を指定してくる、というところです。これまで有休は自分で計画して使ってきたんですが、これからは自由に使えなくなるんですか?」

 

浅「まずは条文を確認してみましょう。年次有給休暇については労働基準法の第三十九条で定められているのですが、そこに以下の条文が追加されました。

 

“第七項

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。 以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし……″

 

ま「……浅尾さん、条文まだ続きます? ちょっと辛くなってきたんですけれど」

 

浅「あら、まふゆさんならこの程度の文章大丈夫大丈夫。
法律の条文って、1つの文が長くて読み解くのがしんどいですよね。でもね、読み慣れてくると、よく練り上げられた文章構成に感嘆の気持ちすら生まれてくるようになるんです」

 

ま「(浅尾さん、条文オタク? そんなオタク、いるのかな)
えっと、まとめます。要は、会社は年に10日以上の年次有給休暇が発生する従業員に対して、そのうち5日は日を決めて取得できるようにしなければならない、ということが書かれているんですよね」

 

浅「その通りです。いままでは有休を使うか使わないかは本人に任されていた状態で、結局一切使わない人がいたとしても企業が責任を問われることはありませんでした。
来年4月1日にこの法律が施行されてからは、1年の有休消化日数が5日未満だった人が1人でもいれば、労基法違反となります」

 

ま「1人でもいれば、ですか。厳しいですね。本人が希望しなくても、必ず休ませなければならないんですか?」

 

浅「そうなんです。有休をとりやすい職場の方にとっては、取る取らないの自由を奪われるようにも思えるかもしれませんね。
ただ、こうした制度ができたのには理由があるんです。

 

長い間、政府はなんとか有休取得率を上げようと広報活動を続けてきたのですが、なかなか結果がついてこない。そこでリサーチしてみると、なんと「有休を取ることにためらいがある」という人が6割以上も存在していることが分かったそうです。これでは本人に任せていてはいつまでも取得率を上げようがない、実労働時間を減らせない。そして生まれたのが今回の有休取得義務化、という訳です」

 

ま「じゃあ、私のように5日以上休んでいる場合は?
勝手に会社に5日も取得日を指定されるとちょっと困ることがあるかも……」

 

浅「まず、会社が有休取得の時季を指定できるのは事実ですが、その際には

  ・従業員に、取得時季について希望を聴くよう努めること

  ・その希望を尊重し、取得時季を指定すること

とされています。ですから必ずしも会社から一方的にというわけではありません。
ただ、これはこの法律施行前からの話ですが、会社は従業員が希望する有休の取得時季について変更することができる権利(時季変更権)を持っているんです。時季変更権を行使できるのは休暇を取ることで明らかに業務に支障をきたすような場合に限定されますが、希望が必ず通るとは限らない、ということは心に留めておいてもよいでしょう」

 

ま「そのあたりは大丈夫です。私忙しい時期は冬が来る前のリスのようにくるくる働いて、落ち着いている時に心置きなく休むのが大好きなんです」

 

浅「それからもうひとつ。従業員が自ら5日以上の有休を取得した場合は、会社が取得日を指定しなくてもよいことになっています。
有休の本来の趣旨から考えると従業員が自主的に取得するほうが望ましいはずですので、すでにある程度以上の有休取得がある企業であれば、1年のうちある一定の時期までは従業員の自主的な取得に任せておき、半年程度経ったところで取得状況をチェックしてみるという方法もよさそうです。チェックした時点で5日の取得に満たない人に対してだけ、未取得日数分の有休取得日を指定する、という方法です」

 

ま「従業員全員に有休の希望日を聴いて調整するのは大変でしょうから、その方法のほうがよさそうですね。
ところで浅尾さん、ここでの「1年」ってどの期間を指すんですか?」

 

浅「従業員ひとりひとりの有休付与日から「1年」です。

 

うちの会社、シナプスイノベーションでは年に1回、全社員に同じ日に新規付与する方法(有給休暇の斉一的取扱)を取り入れて、法律を上回る基準で付与しています。このような斉一的取扱いをしている企業の場合は、全社員同じ日から1年をカウントできますので、わかりやすいですね。

 

法律通りの取扱いをしている企業の場合は入社日の6ヶ月後が初回の有休付与日、その後はそれから1年ごとに付与しているはずです。となると、1年の開始日が人によってバラバラになってしまので、5日の取得を管理推進するのは大変だと思いますよ。
システム屋さんの押し売りみたいですが、ここはシステム化しなければ管理職にかかる負荷が増えてしまうかも。もちろん、これをコミュニケーションのきっかけとしてあえて手をかけるという考え方もあると思いますけれどね」

 

ま「シナプスって1月1日に付与ですよね。この法律の施行は来年の4月1日ですけど、じゃあ来年付与の有休はどのように扱われることになるんですか?」

 

浅「4月1日以降に有休が新しく付与された日から、5日の取得義務が始まることになります。ですので、まふゆさんの場合はこの法律が適用されるのは2020年1月1日からですね」

 

ま「そっかぁ。そのころには、元号も変わっていますね」

 

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今回の改正で、「年次有給休暇管理簿」の作成と3年保存も義務化されました。企業には年次有給休暇の適切な管理と運用が求められることになります。
当社のように有休の斉一的取扱いをしている企業様の場合も、斉一的付与日まで安心と気を抜くことは、実はできません。入社してから間もない方の初回有休付与日は、斉一的付与日より先に来ませんか? その場合の取扱いについては、以下の参考資料をご確認ください。

 

■参考資料:厚生労働省「年次有給休暇の時季指定義務」
https://www.mhlw.go.jp/content/000350327.pdf

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浅尾
この記事を書いた人

浅尾 美佳(あさお みか)

食べてしゃべって走る、特定社会保険労務士。
使命は社内平和と世界平和。
ジョージ・クルーニーの嫁に憧れています。

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