HACCPで原価がカイゼンできる

カイゼンコンサルタントのKANSINノート, 製造業

 

おはようございます。
シナプスイノベーション プロダクトクリエイション部・中里です。

 

もう12月。
早いもので、今年もあと1ヶ月足らず。
皆さんも、忘年会など食べるイベントをいろいろ予定しているのでは?

 

今回は食べるモノ、つまり食品を製造する際に重要となる手法「HACCP」の話です。

 

HACCP(ハサップ/ハセップ)とは

HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字をとったコトバです。
厚生労働省のHPでは、

 

HACCP とは、 食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようする〔原文ママ〕衛生管理の手法です。
この手法は 国連の国連食糧農業機関( FAO )と世界保健機関( WHO )の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会から発表され、各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。

と説明されています。

 

世界各国で導入されており、日本でも、東京オリンピックのある2020年に向けて義務化されることが決まりました。

 

HACCPの目的は、「安全な食品を消費者へ届けられるようにすること」です。
食品製造業界の方はこれまでも十分心がけてこられたことと思いますが、それではHACCPは従来の方法と何が違うのか、比べてみましょう。

従来の管理方法製品ができてから抜き取り検査を行います。
不合格になると、直接検査した製品を含め、同一ロット等の一連の製品が廃棄となります。
HACCPの管理方法原材料の入荷から製品ができるまでの各工程について、あらかじめ危険を予測しておき、その危険を防止するために特に重要な工程=重要管理点(CCP)を設定します。
各CCPに対して管理基準(CL)を設けて、これに基づいて都度製品の状態を監視します。
そうすることで、最終製品ができる前に、問題のある製品を見つけることができます。

つまりHACCPでは、製造中からモノの状態をチェックするので、より効率的に、問題のある製品の出荷を防ぐことができるということです。

 

食の安全を守るためのとてもよい手法ですが、これを原価管理の観点で見てみると、また別のメリットがあります。

「原価管理」の観点から見たHACCPの効果

従来の方法だと、製品ができてから検査を行い、不合格となれば一連の製品をすべて廃棄していました。
製品を廃棄すると、原材料はもとより、作業したヒトの時間、オーブン等の機械の稼働、電気代、水道代などなど、かかった全ての原価がムダになります。

 

原価管理の世界では、原則、廃棄された製品の原価は全て合格した最終製品に振り分けられます。

 

1個作るのに100円かかるカップケーキを、1日に1000個作ったとします。
そのうち、500個が不良となった場合、最終製品500個に対して原価が100,000円で、本来なら1個当たり100円で作れるカップケーキを200円で作ったことになります。
無視できないコストです。

 

HACCPの場合、製造工程中にCCPを設定し、そこでモノを監視します。
例えばカップケーキならオーブンで焼く工程がCCPとして考えられます。
ここで不良と判断されたモノはそれ以降の工程には進みません。
ですから、以降かかるはずだった費用はかけずに済みます。
従来の方法と比べて原価がカイゼンできるということです。

 

省庁の発表によれば、日本の2017年の食品廃棄物は2842万トン、うち本来食べられたはずのモノである食品ロスは約646万トンだそうです。
廃棄コストは1兆円を優に超えるでしょう。
HACCPを取り入れ、工場での製造管理をしっかりとすることで、国全体としてこの膨大なロスを少しでも減らす事ができるのではないでしょうか。
一方各食品製造業は、原価を低減する事ができて利益が生まれます。
もちろん、消費者の食の安全も守られる。
良いことばかりですね。

 

HACCPの導入は、以下の7原則12手順に沿って行うこととされています。

HACCP導入の手順

  • 手順1    HACCPのチーム編成
  • 手順2    製品説明書の作成
  • 手順3    意図する用途及び対象となる消費者の確認
  • 手順4    製造工程一覧図の作成
  • 手順5    製造工程一覧図の現場確認
  • 手順6【原則1】  危害要因分析の実施
  • 手順7【原則2】  重要管理点(CCP)の決定
  • 手順8【原則3】  管理基準(CL)の設定
  • 手順9【原則4】  モニタリング方法の設定
  • 手順10【原則5】改善措置の設定
  • 手順11【原則6】検証方法の設定
  • 手順12【原則7】記録と保存方法の設定

手順1から5は、手順6から12つまり原則1から7を実施するための準備段階です。
HACCPを担当するチームを編成し、そのチームが中心となって、どんな製品をどんなふうに作っているかをまとめます。
そして手順6以降で、その製品を作るときに注意すべきポイントを見つけ、その管理の方法、モニタリングの方法などなどを設定していきます。

 

このようにまとめられると当たり前のことにも見えますが、やるとなると難しいことです。
ヒトの力だけでできるものではないと思います。

 

CCPの管理のためには、CLで測れる明確なデータをさまざまな装置を使って取得する必要があります。
例えばカップケーキを焼くオーブンなら、その温度を継続的に測るセンサーです。

 

データを取得したら、次はシステムの世界です。
CLをシステムであらかじめ管理しておき、計測したデータと比較して、不良品をチェックします。
またHACCPでは、CCPがきちんと管理されているかを日々モニタリングすることになっています。
そのモニタリングしたデータをシステム上で評価し、保存します。

 

他にもHACCPのために必要なドキュメントを管理したり、HACCP導入前後でどのように原価が推移したかを把握したり、システムが負うべき役割はいろいろと考えられます。

 

シナプスイノベーションでは、HACCP義務化に備えて、来年の1月にHACCP対策セミナー(現在は受付終了済)も予定しています。
J WALDはIoTやAI等最新の技術も取り入れて、いろいろな機能を備えているので、お役に立てることがあると思います。
食べるモノづくりのこれからを、ご一緒に考えていきましょう。

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中里
この記事を書いた人

中里 真仁(なかざと まさひと)

宝塚歌劇をこよなく愛する生産管理&経営管理コンサルタント。
神戸生まれの神戸育ち。海を眺め、山へ登ることが好き。
関心あること、感心したこと、歓心を得た事を綴ります。

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