クラウドってどんなもの?
②セキュリティって大丈夫?
はじめに
近年、クラウドサービスの市場は大きく広がり、ニーズに合わせて様々なサービスが展開されるようになりました。
しかしその一方で、クラウドってちょっと怖い、あるいはうちの工場では使いにくい、そんな風に感じている方もおられるかと推察します。
今回は、皆さまがお持ちのクラウドへの不安を、もう少し掘り下げてみたいと思います。
関連記事:クラウドってどんなもの? ①コンピュータシステムの歴史
大事なデータ、守れるの?
クラウドへの不安といえば、まず挙げられるのがセキュリティでしょう。
業務にコンピュータシステムを活用してきた企業は、これまでずっと、より安く、より速く、より楽にシステムを導入し、運用していくことを求めてきたと思います。クラウドサービスはそんな欲求を満たすものです。
それなのになぜ敬遠する気持ちが拭い去れないのか。よくお聞きするのが、コンピュータシステムからの情報漏洩や、コンピュータウィルスによるシステムダウンなど、様々な脅威に恐れおののくあまりに、どうしても全幅の信頼がおけないというお話です。お気持ちはよく分かります。
特に製造業にとって、製造の計画や実績、製造の仕方(レシピ)などは、他社に絶対に知られたくない情報です。クラウドになんて預けられない、もしも万が一漏洩したらと考えることでしょう。あるいは、思わぬトラブルでデータが失われてしまったら。これも大変なことです。
クラウドベンダーのセキュリティ対策
企業はこれまで、コンピュータの故障や操作ミスによってデータが失われないように、データのバックアップをとり、人的ミスによる情報漏洩や日々進化しているコンピュータウィルスに対応するために専門部門や担当者を設け、組織として多大なる労力を注いできたかと思います。
クラウドサービスの場合、どこのサーバで動いているのか知らないくらいですから、利用者自身ではバックアップの取りようもありません。
ですが、データの安全性がまったく担保されないのかというと、そんなことはありません。冗長化といって、データを複数の記憶媒体に何重にも書き込み、さらに提供者側がバックアップを行っているのが、多くのクラウドサービスの裏側だと思います。
また、クラウドサービスを運用する会社は、利用者のデータを預かりつつサービスを提供することが生業で、ハッキングやウィルスに対して安全・安心と担保しなければ商売にはならないわけですから、そのあたりについても対策を怠っていないと私は感じています。
だとすれば、しっかりとした実績を持つクラウドサービスを選べば、むしろセキュリティ対策から解放されることになります。
それでも……と思う方は、既にクラウドサービスの利用が活発になっている顧客情報管理について考えてみてください。これも他社に知られたくない情報の1つですが、世の中の多くの会社が、Salesforceなど、クラウドサービスのCRMを利用しています。
これらからの大きな情報漏洩がニュースとなったことはまだありません。100パーセント安全とはいかないのはオンプレミスでも同じですから、この実績にある一定の信頼をおいてもいいのではないでしょうか。
パソコン、スマホとタブレット
もうひとつ、実務にシステムを使う上で問題になりがちな点に、アクセスする端末があります。
クラウドサービスを利用する端末、というと多くの人がタブレットやスマホを思い浮かべると思います。
業務ではなく一般利用を想定して提供されているSaaSは、利用者が迷わず簡単に利用できるように、端末に専用のアプリをインストールする形を取っているものが多いので、クラウドサービスの端末=タブレットorスマホとなってしまっているのかもしれません。
確かに、タブレットやスマホはパソコンと違って、画面をタッチして操作する直感的なユーザインターフェースや、カメラと通信機能が1つにまとまった多機能性などの面で、非常に優れた端末であると言えます。
さらに市場への普及具合、利用者の操作の習熟具合はパソコンとは比べ物にならないくらいで、世界中の人が使える代物です。
しかし、業務を行う上では、タブレットやスマホではちょっとね、と思うことがいくつかあると思います。
まず、画面の大きさ=1度に目にできる情報量の違いです。タブレットやスマホでは画面が小さく、1度に大量の情報を見ることができないため、どうしてもパソコンで見たいということも多々あるでしょう。
近年はディスプレイが相当安価になり、一昔前なら10万円はしていたサイズでも数万円で手に入りますから、大画面で見たいのでパソコンを買うというのは無理な話ではありません。
もう1つは、入力時の速度=短時間に入力できる文字数の違いです。20代、30代の方の中には、キーボードよりもタブレットやスマホのフリック入力の方が速いと主張する方もおられるかもしれませんが、私は、1度に見られる情報量と入力の速さは関係していると思います。
誰しも自分の入力した文章を誰かに送るときには、全体を見直して、それから送信するでしょう。小さな画面から入力した報告文を送信するには勇気がいるのではないでしょうか。こういうことはやはりパソコンでやりたいという方が多いと思います。
余談ですが。タブレットやスマホを利用することに慣れている人は、LINEなどで会話する際、大量の文字を一気に送ることはせず、短文の往来で会話しますよね。
大昔の手紙や一昔前のメールなどのように1度に大量の情報を送るのでなく、相手の状況を確認しながらこちらの考えを伝えているわけで、リモートコミュニケーションのリアルタイム化が進んだ結果こうした方法がとられるようになったのではないかと思います。
マルチに使えるサービスを選ぶ
事務所などで、その日、その月の生産計画を確認したり、生産実績を確認したりして、明日、来月、どうしていくかを考えるためには、作業員のシフト、製品や材料の在庫具合など、複数の情報を参照する必要があります。タブレットやスマホの小さな画面を切り替えながら考えるのは、さすがに難しいと思います。
あるいは見る分には足りたとしても、考えたことを入力する余裕はないので紙にメモしつつとなったら、タブレットやスマホを導入した意味がありません。こういった場合にはパソコンを使うことになるでしょう。
一方、製造現場でいちいちパソコンの前まで移動して作業指示を確認したり、作業実績を入力したりするのは面倒です。だからバーコードやQRコード、RFIDなどが利用されるわけです。
こういったシーンでは携帯できるタブレットやスマホが最適です。そもそも通信端末なわけですから、これを用いた操作はワイヤレスかつリアルタイムにデータとして蓄積されることになり、願ったり叶ったりです。
つまり、製造業の業務にクラウドサービスをフィットさせるためには、使用する端末をタブレットにスマホ、パソコンとTPOによって使い分けられなければならないということです。
スマホやタブレットの専用アプリからでも、パソコンに一般的にインストールされているブラウザからでも利用できるサービスであることが必要になってきます。クラウド=タブレットorスマホという認識だと、うちにはちょっとねと思ってしまうかもしれません。
ですが実際にはアクセス端末の使い分けができる業務用クラウドサービスは少なくはありませんので、自社にフィットするものを是非探していただきたいと思います。
うちでクラウドを使うなら
さて、クラウドはちょっと不安と考えておられた方に、少しでも安心いただくことはできたでしょうか。
うちでクラウドを使うなら……と考えはじめた方のために、ではクラウドサービスって具体的にどんなものがあるの? どういう風に選べばいいの? というところを、次回のコラムで見ていきたいと思います。
