寄り道したら通勤災害にならないの?

シャローシのお仕事, 人事・労務

 

 

今年の桜は早かったですね。満開をすこし過ぎたころ、今年度の新卒新入社員が入社してきました。
シナプスでは新入社員を迎えると、合宿を実施します。

スポコン系合宿ではなく、基本は知的合宿。会社を知り、行動について学び、頭をたっぷり動かし、最後は今年はじめての試みとしてボードゲームで盛り上がって帰ってきました。

 

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まふゆさん(以下、”ま”)「海近くでの合宿も、よかったですね! 最近山奥が続いていたから新鮮でした」

 

浅尾(以下、”浅”)「ちょうど桜も咲いていて、お花見の気分にもなりましたね。
帰りにお花見をして帰ったメンバーもいたみたいですよ」

 

ま「私も帰宅途中に桜を見ながら帰りました! 散り始めた桜がとてもきれいでした~。
でも、桜に気を取られすぎて、段差につまづいて膝をすりむいてしまったんです。
実は今、小学生みたいなかさぶたを膝にくっつけています」

 

浅「それは痛かったでしょう。大丈夫ですか?」

 

ま「結構恥ずかしかったんですけれど、何もないところで転んだのは幸いでした。すり傷をつくってしまっただけです。
ふと思ったんですけれど、通勤の途中で事故に遭ったら、通勤災害の扱いになるんですよね。
桜の名所を通りたくて最寄り駅の2つ手前の駅で下車して、そこから歩いて自宅に戻ったんですけれど、そういう場合でも通勤災害として認めてもらえるんですか?」

 

浅「うーん…通勤災害として認められる可能性は非常に低いでしょうね。
まず、通勤災害として認められるための条件を確認してみましょうか。

通勤災害における「通勤」とは、原則として「住居から就業場所への移動であり(※)、合理的な経路および方法により行われるもの」と定められています」

 

ま「いつものオフィスからの移動ではなくて、合宿先からの移動でも大丈夫ですか?」

 

浅「今回のケースの場合、合宿の開催場所が「就業の場所」として扱われますので、大丈夫ですよ。
ただ、そのあと花見に行ってしまったのは問題かも」

 

ま「歩く距離がちょっと長くなっただけで、通勤経路上にはあるように思うのですが」

 

浅「通勤経路の途中で業務に関係ない寄り道をしたら、通勤経路を外れた後に起こった事故については通勤災害にはならないというルールがあるんです。

通勤経路を外れずに途中下車して一杯飲んで、という場合も、飲み屋さんに移動し始めたところから後は、通勤災害の対象から外れます」

 

ま「厳しいんですね。帰りに寄り道しちゃ、いけないんだ。
私毎日スーパーに寄っちゃってます」

 

浅「その程度なら大丈夫ですよ!

日常生活上必要な用事をこなすための、最小限の寄り道に関しては、例外として取り扱われています。具体的には、以下の寄り道が該当します。

  • 日用品の購入など
  • 職業訓練や学校教育法で定められた学校での教育を受ける場合など
  • 選挙権の行使など
  • 病院や診療所で診察又は治療を受ける場合など 」

 

ま「病院も大丈夫なんですね!ちょっと安心しました」

 

浅「これらの場合も、寄り道の最中については通勤災害の対象外となるのですが、いつもの通勤経路に戻ってきた時点から再度通勤災害の対象になります」

 

ま「通勤災害と認められた場合って、医療費はどうなるんですか?
たしか、業務時間内の事故の場合は、本人は医療費を払わなくていいんですよね?」

 

浅「通勤災害については、本来は200円を本人が負担することになっています。

ただ、この負担金は、その負傷のために休業した場合に受け取る「休業給付」から差し引かれることになっていますので、休業するほどでもない負傷の場合は負担金が発生しません」

 

ま「負担することになっても200円なんですね。なんてありがたい制度なんでしょう」

 

浅:「そうですよね。通勤災害の存在自体を知らずに、通常通りの医療を受けていらっしゃる方も多いように思います。
知らなければ、病院や会社に申し出ることもないですもんね。

とはいえ、病気・ケガはないのが一番!
どんなにきれいな景色でも、歩いているときは前方不注意にならないよう気を付けてくださいね」

 

(※)単身赴任中の方の、配偶者のいる自宅から単身赴任先にある住居への移動等、ほかにも認められるケースはあります。

 

通勤災害といえば、の追加小ネタです。

会社に申請しているルート以外で起こった事故は、通勤災害として一切認められない、という話を聞いたことがありませんか? 都市伝説のように妙に信じられている話ですが、実際には、合理的な理由で通常利用している経路が複数ある場合に、そのうち会社に申請していない経路を利用していても通勤災害として認められます(もちろん、特別な理由もないのに、著しい遠回りをしている場合は認められません)。

例えば、最寄り駅が複数ある場合に、会社から支給されている通勤交通費は会社から近い駅発の「最も経済的な経路」だけれども、実際には差額を支払って1駅遠い急行停車駅から乗車している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

このような場合に、会社が把握している通勤経路と異なるからといって万が一の通勤災害が認められないかというと必ずしもそうでなく、実際にその経路を通常使っているのか、そしてその経路は合理的なものであるのかが、判断基準となるのです。

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浅尾
この記事を書いた人

浅尾 美佳(あさお みか)

食べてしゃべって走る、特定社会保険労務士。
使命は社内平和と世界平和。
ジョージ・クルーニーの嫁に憧れています。

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