契約社員が無期雇用に!近づいてきた無期転換社員誕生の日

【シャローシのお仕事】~シナプス社員ブログ~
シナプスイノベーションの社労士がお届けする、企業の人事・労務に関するお役立ちコラムです。

 

「浅尾さん、ちょっと質問してもいいですか?」

 

分厚いファイルを広げていたまふゆさん、シナプスの社労士 浅尾さんに声をかけながら席の上にちらりと目を配りました。

 

「あ……今そちらに伺ったらダメなタイミングですね」

 

年末が近づくこの時期、健診結果に年末調整の提出書類、来年度の新卒採用準備と色とりどりの書類が積み上げられた人事グループの机は、フリーアドレス化とともに紙の書類を原則廃止したシナプス社内にあって少し異色の存在。

個人情報が含まれる書類もあるため、席に近づく前に状況を確認してくれる社員も多くいます。

 

「大丈夫ですよ。個人情報に関係する書類、今広げていませんから。

まふゆさんが持っているファイル、就業規則ですか?」

 

「そうなんです。

確認したいことがあるんですけれど、表紙に就業規則と書いてある書類がいくつかあって。

私、どれを見ればいいんでしょう」

 

「まず、1ページ目を開けてみていただけますか?

就業規則は多くの場合「総則」から始まります。

総則では、就業規則の目的や、適用する従業員の範囲等、その就業規則全体にかかる原則を定めています。

シナプスでは適用する従業員の範囲によって就業規則が分かれていますから、その部分を確認すれば、まふゆさんに必要な書類がどれかわかると思いますよ」

 

平成24年8月の労働契約法改正で生まれた「無期転換社員」

「総則を見れば、どの就業規則がどの人に適用されるかがわかるんですね。

正社員、短時間正社員、契約社員……ん? 無期転換社員?

浅尾さん、無期転換社員ってなんですか?」

 

「無期転換社員は、平成24年8月の労働契約法改正で生まれた、新しい区分です。

実はまだ(平成29年12月現在)、該当する人は存在しないんですよ」

 

「平成24年の改正から5年も経っているのに、まだいないんですか?」

 

「それは、無期転換の仕組みが理由です。

無期転換とは、有期労働契約(雇用期間を定めた労働契約)が反復更新されて通算5年を超えたときに、労働者が申し込めば無期労働契約(期間の定めのない労働契約)に切り替えることができる制度です。

平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約を対象としています」

 

「それで、まだ5年を超えた人がいないんですね。

期間の定めのない労働契約に切り替えるって、正社員になるということですか?」

 

「無期転換社員=正社員」ではない

「いえ、必ずしもそういうわけではありません。

就業規則や個々の労働契約で定めている場合を除いて、労働条件は原則、直前の有期契約時のものを引き継ぐことになっています。

ですので、週に3日、1日5時間など、パートタイムで働いている方の場合は、その条件のまま、契約期間だけを無期に切り替えて働き続けることができます」

 

「正社員になると勤務時間も基本フルタイムになるし、転勤の可能性もあるしで、それでは困るという方もいらっしゃるでしょうから、それなら安心ですね。

労働者が申し込めばとおっしゃられていましたけど、ということは、5年を超えたからといって自動的に無期契約に変わることはないんですよね?」

 

有期労働契約が5年を超えても自動的に無期契約に変わることはない。また、従業員の無期転換の申し込みを企業は断れない

「はい。申込なく、自動的に無期に変わることはありません。

また、企業側からは、申し込むことも申込を断ることもできません。

もちろん、企業側から無期転換を提案することはできますが、無期への転換を申し込むのは、あくまでも従業員本人です」

 

「そうなんですね。

申込って、いつすればいいんですか?」

 

「有期労働契約が通算して5年を超えると無期転換できる、という話を最初にしましたが、5年を超える日を含む労働契約の期間中が、申込期間となります。

この契約期間中に無期転換の申込をすることで、その次の契約から無期契約に変わります

 

「ふむふむ。申込をすればすぐに変わるわけではないんですね。

平成25年4月1日から1年ごとに契約を更新してきた人の場合だと、平成30年4月1日以降の契約を結ぶと労働契約が通算して5年を超えることになって、その契約期間中の平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間に無期転換を申し込めば、その次の平成31年4月1日以降の契約は無期契約になる。

……というわけですね!」

 

「まふゆさん、具体的にまとめてくださってありがとうございます。

厚労省もポータルサイトを準備して広報に力を入れていますので、是非一度見てみてくださいね。

(有期契約労働者の無期転換ポータルサイトはこちら)

ところで、まふゆさんは就業規則で何を確認したかったんですか?」

 

「来期の経営計画書を作っているんですけど、特別休暇の説明をわかりやすく書き換えたくて。

この部分なんですけれど……」

 

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平成29年12月現在で、無期転換申込権が既に発生しているケースもある

無期転換の申込権は平成30年4月以降に発生すると思い込んでいる人も多いのですが、平成29年12月現在で、無期転換申込権が既に発生しているケースもあります。

 

例えば、1年を超える期間で契約をしている人。

平成25年4月から2年ごとの労働契約を結んでいる方の場合は現在の労働契約が平成29年4月から平成31年3月となりますので、現時点で既に無期転換の申込権が発生しています。

 

また、1年ごとの契約社員でも、当初試用期間として短期間の契約を結んだケースでは、既に申込権が発生していることが考えられます。

例えば、平成25年4月に当初3ヶ月の雇用契約を結び、その後は1年ごとに雇用契約を更新してきた方の場合、現在の雇用契約は平成29年7月から平成30年6月となっているはずです。

この方も既に無期転換の申込権が発生していますね。

 

現在発生しているのは無期転換への申込権であり、実際に無期転換社員が誕生するのは少し先のことではありますが、無期へ転換後の労働条件がわからないことには従業員も申込権を行使できません。

無期転換後の処遇は、就業場所は、定年は……。

無期転換後の就業規則整備がまだであれば、速やかに整えておく必要があるでしょう。

 

法的な強制力が有効になる前から、契約社員の無期転換を自主的に進める企業もある

人材確保のため、契約社員の無期転換や地域限定正社員化を、法的な強制力が有効になる前から自主的に進める企業も多く出ています。

法律順守のためだけに後手後手で動くのではなく、むしろこの機をどう活かすべきか。

中長期の事業計画を踏まえた人材戦略を、改めて検討することをおすすめします。