年次有給休暇が付与されない?

シャローシのお仕事, 人事・労務

 

 

シナプスイノベーションでは、全社一斉の夏休み期間を決めていません。

まふゆさんは8月中には休みを取らず、9月にまとめて有休をとって、ドイツ旅行に行く予定だったのですが……。

 

「まふゆさん、お隣あいてますか?」

 

返事を待たずに隣の席でお弁当を広げだしたのは、シナプスのシャローシ、浅尾さん。

今日のまふゆさんは、目の面積を1.5倍に広げてスマホの画面に見入っています。

 

「今日は読んでないんですね、ドイツの本」

 

「浅尾さん……」

 

「あらまふゆさん、まゆがハの字になっちゃってますけれど……」

 

「実はドイツ、行けなくなるかもしれないんです。
さっきはるちゃんから、有休をもらえなかったって連絡があって。有休がもらえないなんて、そんなのありなんですか?」

 

「はるちゃんって、以前ビアガーデンでお目にかかったお友だちですね。たしか彼女、転職されたばかりでしたよね?」

 

「2月に今の会社に入社したんです。確か入社して6ヶ月経ったら、初年度の有休がもらえるんですよね」

 

「そうですね。労働基準法では、入社から6ヶ月間継続勤務した労働者に対し、最低10日の年次有給休暇を付与するよう定められています。
その後はご存知のように、1年経過ごとに新しい有休が付与されるのですが」

 

「やっぱりそうですよね。
はるちゃん、有休がもらえることを前提に何ヶ月も前から会社に休暇取得を申請していたと聞いていたんです。
はるちゃんの会社は毎年9月がオフシーズンで長期休暇を推奨しているって聞いていたから、オクトーバーフェストをあきらめて9月の旅行に決めたのに!」

 

「それで9月だったんですね。
ビール好きのまふゆさんがオクトーバーフェストを狙わないなんて、どういうことかしらと思っていました。
話が脱線してしまいましたが、さっきの有休の話、付与されるのにもう1つの条件があるのをご存知ですか?」

 

「6ヶ月の継続勤務以外に条件があるんですか?」

 

「その6ヶ月間の全労働日について、8割以上を出勤していること、という条件があるんです」

 

「あっ……」

 

「思い当たること、ありましたか?」

 

「実ははるちゃん、元々12月1日入社だったんです。
入社してすぐの週末にスキーで転んで複雑骨折してしまって、結局1月末まで会社に行けなかったって話していました。
それで2月1日から働き始めたって聞いていたのでその日から6ヶ月で数えていたんですが、もしかして入社日を12月1日として計算するのが正しいのでしょうか」

 

「そうですね。骨折するまで数日でも出勤していたのであれば、入社日は12月1日となっているでしょうね」

 

「でも、2月からは1日も欠勤してないって聞いていますよ。
8割以上出勤した期間が6ヶ月続いたら、有休がもらえるんじゃないんですか?」

 

「残念ながら、通常はそうはなりません。
付与日のタイミングで出勤率を計算して付与の有無を確認しますので、その後の出勤率がよくてもそれが覆されることはありません。
今年度の有休付与日数が0日と決まった場合、次は来年度の付与日まで待つことになるんです。
はるちゃんが12月1日入社であれば、通常は最初の付与が6ヶ月後の5月1日でしょうから、次回の付与は来年の5月1日になるのでしょうね。それまで有休はお預けです」

 

「浅尾さん、その『通常は』って、どういう意味ですか?」

 

「労働基準法は、守らなければならない最低限のレベルを定めたものですので、会社によってはそれを上回る就業規則を定めている場合もあり得ます。
この場合の「上回る」とは、労働者にとって有利な、という意味です」

 

「そういえば、うちも入社3ヶ月目に初年度の有休が付与されますよね。
なんで6ヶ月じゃないのかな、と思っていたんです。
これも「上回っている」ということですね」

 

「ええ、そういうことになります。
はるちゃんがドイツに行けないのは残念ですけれど、まふゆさんまで旅行を取りやめてしまうのはもったいないですね。
せっかくですから、おひとり様旅にチャレンジしてみては?」

 

「うーん。私、おひとり様ラーメンにすら行ったことがないんです。
今月中に、おひとり様で焼き肉に行けたら、ドイツ一人旅に挑戦してみようかな」

 

「おひとり様焼肉!なかなかハードルが高そうですね。報告を楽しみにしていますね!」

 

 

年次有給休暇の付与条件となる8割以上の出勤率は、以下の計算式で確認します。

 

出勤率=【出勤日数】÷【全労働日】

【出勤日数】=算定期間の全労働日のうち出勤した日数

【全労働日】=算定期間の総暦日数から就業規則等で定めた所定休日を除いた日数

 

ここでは詳しく触れませんが、出勤日数に含めるもの、全労働日から除外するもの等が定められていますので、詳しくは労働局などのHPでご確認ください。例えば、産休や育休で休んだ期間は、出勤日数として取り扱われることになりますので、注意が必要です。

 

また、以前のブログではるちゃんが猛省していた「遅刻」ですが、早退・遅刻は出勤日としてカウントされます。

 

ちなみにはるちゃん、来年5月1日には1年目の付与日数である10日ではなく、2年目の付与日数である11日が付与されることになります。まふゆさんとはるちゃん、来年の9月には旅行ができるといいですね。

生産管理、原価管理でお悩みですか?
貴社の課題、私たちに相談してください。

私たちは、製造業のためのソフトウェア開発会社、シナプスイノベーションです。
基幹システムの導入から、生産・物流等の見える化・自動化までワンストップで提案します。
経営層から現場層まで情報を一気通貫につなげられることが強みです。

シナプスイノベーションを知る
浅尾
この記事を書いた人

浅尾 美佳(あさお みか)

食べてしゃべって走る、特定社会保険労務士。
使命は社内平和と世界平和。
ジョージ・クルーニーの嫁に憧れています。

関連記事一覧