転勤命令に、断る余地はあるのか

シャローシのお仕事, 人事・労務

 

シナプスイノベーションでは、大阪オフィスと東京オフィスをテレビ会議で常時接続(※1)するなど、できるだけ長距離移動をせずに仕事ができるよう工夫していますが、それでも転勤が必要になることがあります。

今週、東京から大阪に戻ってきた出水さんと、久しぶりに顔を合わせたまふゆさん。
私もいつか東京に転勤することがあるのかな……と考えていたところに、社労士の浅尾さんがやってきました。

 転勤命令を断ることはできるのか

「それ、東京のガイドブック? まふゆさん、もしかして来週の有休は東京のご予定ですか?」

「いいえ。来週は大好きな作家さんのサイン会があるので休みをとったんです。
会場は大阪なので、半休でも良かったんですけれど、もし握手していただけたら、その後仕事にならないと思って……」

「あら、そんな予定が入っているんですね! 楽しみですね。じゃあ東京にはいつ?」

「それは私が知りたいです」

「?」

「このガイドブックは、いつ東京勤務になってもいいように備えておこうと思って読んでいるんです。
出水さんに、転勤のお話をいろいろうかがったものですから」

「なるほど。備えよ常に、Be Preparedですね。ガールスカウトの精神を感じます」

「浅尾さんガールスカウトだったんですか? 全く意外性はありませんが。
ところで、転勤って、いつ言われても、どこに行くように言われても、断ることはできないものなんですか?」

「うーん、そうですね。転勤は業務命令ですので、原則断ることはできないもの、と考えることになりますね
入社するときに、雇用契約を結んだのを覚えていますか?」

「覚えています。初めて自分で印鑑を押した契約だったので、上から下まで何度も読みました」

「さすがまふゆさん、素晴らしいですね。
その雇用契約を結んだことによって、まふゆさんはご自分の“労働力”の使い方を雇用契約の範囲内で会社に委ねたことになりますので、業務命令には原則従う義務があります。
もちろん、就業規則等に、転勤の可能性があることが記載されている必要はありますが」

「(就業規則、確かグループウェアの資料棚にあったはず…)
あ、書いてあります」

就業規則第16条【異動】
会社は、業務上の必要があるときは、社員に対し従事する職務もしくは勤務場所の変更等の人事異動を命ずることがあります。

「それが、会社が転勤を命じることができる根拠になります」

転勤命令が制限される場合

「ところで、さっきの話に出ていた“雇用契約の範囲内で”ってどういう意味ですか?」

職種や勤務地を限定して採用して、雇用契約等にその旨を明記している場合は、ご本人の同意なくその職種・勤務地を変える異動はできないんです。
“地域限定正社員”などの名前で募集しているケースが、これに当たります」

「そういえば、私の友人にもいます! 銀行の地域限定正社員の子。
でも銀行は支店が多いから、限定されている地域の中で転勤がしょっちゅうあるみたいですよ。
地域限定だからって、転勤がないわけではないんですね」

「会社の状況によるでしょうね。地域ではなく、支店を限定して契約しているケースもありますよ。
雇用契約は会社や人によってそれぞれですが、日本の新卒採用は大半がゼネラリスト採用ですから、職種も勤務地も限定せずに契約しているケースが多いのではないでしょうか」

転勤命令が無効とされたケース

「でも……例えばご両親の介護をしている人が突然転勤と言われたら、やっぱり困るんじゃないでしょうか。それでも断れないものですか?」

「実は、裁判所が転勤命令を無効としたケースもあるのです。
例えば、本人や家族の病気、介護などの事情があったケースで、その事情を知っていた上で出された転勤命令を、会社の職権濫用とした裁判例があります。
もちろん、その他の周辺事情も考慮したうえでの判決ですので、病気や介護の事実だけで無効になったわけではないのですが。とはいえ、

  1. 業務上の必要性があるか
  2. 不当な動機・目的がないか
  3. 転勤により、通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせないか

をクリアしていれば、転勤命令は有効とされるのが一般的です。
先ほどの病気・介護のケースは、“転勤により著しい不利益を負わせる”と判断されたため、無効になったものですね」

新しい働き方に目を向けて

「業務命令という言葉だけ聞くと、一方的な印象を持ってしまいますが、会社も経営上の効果と個人の事情をある程度は秤にかけた上で、判断してくれるということですね」

「そうですね。特にシナプスイノベーションはその傾向が強いと思いますよ。例えば、この春に育休から職場復帰した椎原さん……」

「復帰と同時に、社内結婚の旦那さんと揃って、東京から転勤してこられましたね!」

「東京は保育所激戦区ですので、大阪で子育てしながら働かないかと藤本さん(※2)が誘ったそうですよ」

「へぇ、そんな転勤もありなんですね」

「シナプスイノベーションは社員が長く勤められる仕組み作りに、常に挑戦的です。
従来の“転勤”のイメージとはすこし違うかもしれませんが、会社と社員が到達したいゴールを共有しているからこそ、常識にとらわれずに判断ができたのではないでしょうか。
こうした、めまぐるしく変化する世の中の流れに対応し、かつ社員がさらに過ごしやすくなる“新しい働き方”に対して、常にオープンマインドでいたいですね」

「大阪にいながら、テレビ会議での常時接続を使って、東京や、世界中の支店や、世界中の自宅にいる仲間と一緒に仕事をしたり、もちろん自分が海外の支店に転勤してみたり。
思うままに働けるようになる日も、そう遠くない気がしてきました。
私、次はミュンヘンのガイドブックを買ってきます!」

「じゃあ私には、ムンバイのガイドブックをお願いします。ハワイもいいな」

「えっ、自分で買いに行ってくださいよ」

「まふゆさん、冷たい……。年上を敬えって習いませんでした?」

「シナプスイノベーションはフラットな社風も売りですから」

・・・

そんな話をしながら、自分が働いてみたい場所にオフィスを出す夢を、勝手に描き始めた2人でした。

※1:テレビ会議で常時接続…シナプスイノベーションは各オフィスにテレビ会議設備を設置し、業務時間中は常につながっている状態にしています

※2:藤本さん…シナプスイノベーション代表取締役社長。シナプスイノベーションは社員同士、役職に関わらず「さん付け」で呼び合っています

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私たちは、製造業のためのソフトウェア開発会社、シナプスイノベーションです。
基幹システムの導入から、生産・物流等の見える化・自動化までワンストップで提案します。
経営層から現場層まで情報を一気通貫につなげられることが強みです。

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浅尾
この記事を書いた人

浅尾 美佳(あさお みか)

食べてしゃべって走る、特定社会保険労務士。
使命は社内平和と世界平和。
ジョージ・クルーニーの嫁に憧れています。

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