続々と決定される、介護離職ゼロに向けた施策

シャローシのお仕事, 人事・労務

2015年秋にアベノミクスの第2ステージとして発表された「新三本の矢」。
その矢の三本目に示されていたのが、「介護離職ゼロ」です。

シナプスイノベーションにおいても「介護離職ゼロ」は重要な目標の1つ。
これまでにも、育児や介護で出勤することが難しくなった社員に在宅勤務をすすめるなど、長く働き続けられる環境づくりに取り組んできました。

今放たれようとしている「介護離職ゼロ」の矢の中には、企業の就業規則の改定が必要な法改正も含まれます。

概要については、昨日、厚生労働省のホームページに掲載されましたが、経営者、総務・人事のご担当者様は、今後発表される省令および指針を待って、会社として必要な対応を検討いただくことになるでしょう。

※厚労省が発表した概要リーフレットはこちら(2016年6月28日に確認)。

今回は上記の厚労省資料に沿って、もうすぐ施行される介護にかかわる法改正についてまとめます。

介護にかかわる法改正(2016年6月28日現在)

1)2016年8月1日施行
1-1)介護休業給付の給付率引き上げ

2)2017年1月1日施行
2-1)介護休業の分割取得
2-2)介護休暇の半日単位取得
2-3)介護時短勤務等措置の期間延長
2-4)介護のための所定外労働免除
2-5)有期契約労働者の介護休業の取得要件緩和

それぞれの詳細について

1-1)介護休業給付の給付率引き上げ(2016年8月1日施行)

介護休業給付とは、介護事由の休職者に対し雇用保険から支給される給付金です。
現在は休業開始前賃金の40%が支給されています。
改正後、これが67%に引き上げられます。

ちなみに「育児休業給付」の給付率は既に67%に引き上げられています(※1)。
今回、介護休業給付が育児休業と同じ給付率とされたことからも、政府が介護離職問題に本腰を入れたことがうかがわれます。

(※1):
開始日より180日分

2-1)介護休業の分割取得(2017年1月1日施行)

介護休業(※2)は最長で93日まで取得可能ですが、現在は一要介護状態につき1回限りとされています。
(ご家族が同じ要介護状態である限り分割して取得することは認められていません)
改正後は対象家族1人につき3回を上限として分割取得することが可能になります。

2-2)介護休暇の半日単位取得(2017年1月1日施行)

介護休暇(※2)は現在は1日単位で取得することとなっています。
改正後は半日単位で取得できるようになります。
ここでいう半日は、「所定労働時間の2分の1」です。
“有給休暇”を半日単位で認めている企業の中には、正午を区切りとして半日としているケースもありますが、その場合、介護休暇と「半日」の定義が異なることになるため注意が必要です。

(※2):
「介護休業」と「介護休暇」の違いは以下の通り。
<介護休業>
長期(最長93日)にわたる取得が可能な休暇。
休業期間中は雇用保険から介護休業給付が支給されます。

<介護休暇>
就業しながら1日単位(改正後は半日単位)で取得できる休暇。
有給・無給は会社で定める就業規則によります。
取得可能日数は、対象家族が1名の場合年5日、2名以上の場合年10日まで。

2-3)介護時短勤務等措置の期間延長(2017年1月1日施行)

現在、事業主が実施している介護時短勤務等の措置(※3)は、介護休業と通算して93日の範囲内で取得が可能とされています。
改正後は「93日が上限の介護休業とは別」に「利用開始から3年の間で少なくとも2回以上の利用を可能とすること」が求められます。

(※3):
介護中の社員に対して介護休業とは別に、
1)所定労働時間の短縮
2)フレックスタイム制、

3)始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ
4)介護サービスの費用助成

のいずれか1つを選択して実施するもの

2-4)介護のための所定外労働の免除(2017年1月1日施行)

介護中の社員の請求により所定時間外の勤務が免除される制度が新設されます。
ポイントは「期間の上限が定められていないこと」です。

介護は育児と違い、終わりが見えないこともしばしばです。
長期にわたることも多い介護を、職業生活と両立させることが目的です。

2-5)有期契約労働者の介護休業の取得要件緩和(2017年1月1日施行)

現在、有期契約労働者(いわゆる契約社員)が介護休業を取るための要件に、「介護休業開始日の93日経過日から1年を経過する日までの間に雇用契約が更新されないことが明らかである者を除く」とあります。
要は、現在は、介護休業を取る日から約1年3ヶ月の間雇用契約が続く見込みがある人だけが、介護休業を取れる、ということです。

改正後、この「1年」が「6ヶ月」に緩和されます。
要は、改正後は、介護休業を取る日から約9ヶ月の間雇用契約が続く見込みがある人が介護休業を取れる、ということです。(※4)

(※4):
雇用契約継続が“確定”していなくても、続く見込みがあればよいとされています。
なお、「申出時点で過去1年以上継続して雇用されている」という要件は今も改正後も同じです。

・・・

この他にも、現在は介護の対象家族が祖父母、兄弟姉妹、または孫の場合は、「同居かつ扶養していること」という要件がありますが、これが撤廃される予定です。

せまる2025年【介護クライシス】

2025年には、団塊世代が後期高齢者世代に入ります。
これまで、育児や介護は一部の人だけの問題ととらえられがちでした。
実際多くの企業では、介護による休職・退職が発生しても、残った社員でカバーできたり、欠員補充で乗り越えることができたのではないでしょうか。
しかし、これからの介護問題は、今までとは違う規模でとらえる必要があります。

2025年問題は、「介護クライシス」とも呼ばれています。
企業でも、多くの社員に起こりうる問題と考え、真剣に対策を講じなければならないときが来たのではないでしょうか。

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浅尾
この記事を書いた人

浅尾 美佳(あさお みか)

食べてしゃべって走る、特定社会保険労務士。
使命は社内平和と世界平和。
ジョージ・クルーニーの嫁に憧れています。

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