クラウドってどんなもの?

①コンピュータシステムの歴史

はじめに

皆さんの工場では、クラウドサービスをお使いでしょうか。

クラウドサービスとは、インターネット越しに提供されるサービスを、必要な時に、必要なだけ使うコンピュータシステムの利用形態のことです。
利用者は必要なサービスを利用するだけで、インターネット越しに何台のサーバが稼働しているのかなんて知らなくても、サーバのメンテナンスなんて考えなくてもよいのです。

企業としてコンピュータシステムを導入するとき、利用者の多くは、より安く、より短期で、より簡単にと希望なさいます。しかし、自社にサーバを設置して構築する、いわゆるオンプレミスでのコンピュータシステムの導入では、費用、期間、人材の問題は簡単にはクリアできませんでした。ところがクラウドサービスであれば、これらがあっさりとクリアできます。そのためいまやどんどんクラウドサービスへの乗り換えが加速し、その市場は広がるばかりだと感じています。

ところがその一方で、モノづくりを営む企業の中には、クラウドサービスは怖い、導入をためらうというところも多いのも事実です。
そこで今回から全3回のコラムで、クラウドってどんなものなのか、安心して使えるのか、簡単にお話してみたいと思います。

ホストコンピュータと端末の時代

まずは、クラウドサービスがこれまでのコンピュータシステムとどう違うのかを理解するために、企業がシステムを使うようになってからクラウドサービスが普及するまでの歴史を振り返ってみましょう。

1970~80年代は、ホストコンピュータと入出力装置による業務の電子化、オンライン化が進められた時代です。

オンラインとは、ライン=線、オン=乗っている、という意味で、そもそもはホストコンピュータと末端の入出力装置とが線(ケーブル)で繋がっている状況を指す言葉でした。敢えて入出力装置と記載しましたが、当時、ホストコンピュータにオンラインで接続される機器といえば、磁気テープ、紙カード、紙テープ、モデム、キャラクタディスプレイ、プリンタなどでした。現在のソフトウェアエンジニアにこれらの機器のことをそのままの名称で話してみても、イメージが湧くのはプリンタくらいだと思います。しかも実際には、プリンタという言葉から現在のソフトウェアエンジニアがイメージするものと当時の人間がイメージしたものとはまったく異なっています。

これらの機器の販売は基本的にホストコンピュータを開発・販売している企業が行っており、コンピュータシステムは「一式」として提供されるものでした。

Windowsの登場

1990年代に、マイクロソフトによってWindowsが発表されました。

それまでは、コンピュータに指図をするには、コマンドユーザインターフェース(CUI)と呼ばれる、文字でのコマンド入力しか方法がありませんでした。ところがWindowsの登場によって、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)と呼ばれる、画面上の絵や図を選択する直感的な操作によって、コンピュータと対話することができるようになりました。これは一般ユーザにとってはとても画期的です。

さらに業界人としてもっとすごいと思うのは、プラグアンドプレイの概念を持ったことです。
プラグアンドプレイとは、コンピュータに機器をケーブルで繋ぐだけで、その機器を動かすための設定が自動的になされて、すぐに利用できる仕組みです。

それまでホストコンピュータと周辺機器をつなぐのには相応の技術が求められたため、基本的には販売元から一式で提供されていたことを考えれば、ビジネスをひっくり返すような画期的かつ驚異的な概念だと思います。

画期的な製品として世の中が湧いたものの、ではそれまでホストコンピュータと専用の機器によって作り上げられてきた業務のためのコンピュータシステムがすぐにマイクロソフトの製品を搭載したものに置き換わっていたかというと、そういうわけではなかったと記憶しています。

概念は素晴らしかったのですが、現実には機器ごとに接続に使うケーブルやコンピュータとのやり取りの規格が異なっていたり、デバイスドライバと呼ばれる専用のソフトウェアをWindowsにインストールして設定するというマニアックな操作が必要になったりしたために、すぐさまWindowsがその猛威を振るうことはありませんでした。

クライアント/サーバシステムの席巻

しかし2000年代以降には、Windowsが持つ機能・概念に世の中の機器が追い付きました。コンピュータシステムが保持しなければならない情報の量は飛躍的に増加し、ハードディスクの大容量化が進み、更には、もっと離れたところからもコンピュータを利用したいという人間のわがままな欲求がネットワーク技術を進化させました。

この時代に、システムの中心となるコンピュータはサーバと呼ばれる存在となり、利用者が直接操作するコンピュータをクライアントと呼ぶようになり、そして、サーバ、ネットワーク、クライアントを駆使して業務のためのコンピュータシステムを構築することをシステムインテグレーションと呼ぶようになりました。

サーバ、ネットワーク、クライアントによって構築されたコンピュータシステムの価格は、かつてホストコンピュータと入出力装置が一式だったものに比べて半分ほどになったので、あっという間に導入する企業が増え、世の中はWindowsをベースとしたクライアント/サーバ形式のシステム一色で染められていきました。

ホストコンピュータ型のシステムに係る費用の高さや運用の手間から解放されるメリットがとても大きかった一方、後に私たちが悩まされる、技術革新による弊害ともいえる情報漏洩、コンピュータウィルスについては、想定するのも難しかった時代でした。

クラウドってどんなもの?

そして時代は21世紀、我が国の年号は平成から令和に代わり、高度経済成長期のように右肩上がりの景気が期待できない世の中にあって、コンピュータシステムは大きく様変わりしました。

より安く、より短期で、より簡単に導入できるクラウドサービスの登場です。

このクラウドサービスを使用していくうえで、気を付けるべきポイントは一体なんでしょうか?
次回のコラムでは、気になるセキュリティ面についてお話します。

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