先の読めない世界で生き残るために

経営 事上磨練, IT・IoT, 経営・マネジメント, 製造業

 皆さま、あけましておめでとうございます。

 2021年は、引き続き新型コロナウイルス禍のために予断を許さない年となりました。しかしながら、2020年と比べて一定程度の対策が確立された年でもありましたので、このような状況下でも、数多くの製造業の皆さまとお会いすることができました。

 その中で実感いたしましたのは、ITは所詮は道具にすぎないけれど、今や、その道具に習熟しなければ経営が困難な時代になってきていると、ITの導入を支援する者として皆さまにお伝えしなければならないということです。

 人間の営みとして理想的なのは、ITなど使わずに、目と耳で知り、手と言葉で伝えることかもしれません。ですが、現実の問題として、最新のITを使いこなしておられる企業とそうでない企業とでは業績に差が開いていると私は考えています。「最新の」というのがミソであり、昭和のIT、平成のITに留まっている企業も、令和の時代には困難に見舞われると予想されます。それは何故なのか、3つの点に注目して考察いたします。

 

①終身雇用の時代が終わったこと

 昭和の時代までは終身雇用が当たり前でしたから、社員は自分が勤める会社を守ることが自分を守ることと考えていました。情報もノウハウもすべては会社のものとみなし、同じ会社に属する人同士、緊密なコミュニケーションでこれを共有してきました。

 しかし、今や終身雇用の時代は終わり、自分に割り当てられたタスクをこなすのが仕事だと考える従業員も、従業員との関係を金銭による雇用関係と割り切る経営者も増えました。社会構造の変化に伴うある種自然な流れです。その結果、企業への情報の蓄積は、少なくともかつてのように、従業員の手と言葉に任せて放っておいても行われるものではなくなりつつあります。この点を補うのがITによる網羅的で確実な情報共有です。

 昭和のITは手と言葉のコミュニケーションを補助するものでしたが、現代のITは企業が情報を十分に活用するためになくてはならないものだとお考えください。

 

 

②未来の予測が難しくなったこと

 ITを使えと言われても、MRPは実務に合わないんだ。スケジューラはどうにも使いづらいんだ。製造業に関わる多くの方がこうおっしゃいます。何故使いづらいのかというと、実は、少し前の世代のMRPやスケジューラは、既に現在の製造業のスタイルに合わなくなっているからです。

 従来の製造業向けシステムは、手間や人的なミスを削減するために、製品情報等の多くの情報を事前にマスタとして登録しておき、実務ではそれを参照するという思想で設計されていました。かつては確かに、この設計によって人的ミスが減り、効率化ができていました。

 しかし、いまや世の中の動きは目まぐるしく、あらゆる製品のライフサイクルが短くなっています。10年間同じ製品だけを作り続け、明日からも10年作り続けるだろうという企業は決して多くはなくなりました。そのため、従来の考え方のシステムを導入し、苦労してマスタ情報を登録したところで、データはあっという間に陳腐化します。ただ設定の手間がかかるだけです。

 このように、一世代、二世代前のITは、もはや現代のビジネスでは通用しないものとなりつつあるのです。私が「最新の」ITと繰り返す理由はここにあります。

 今や、昨日の現実が明日も現実として通用するとは限らないVUCAの時代です。私としては、不確実な将来に対応するには、かつてのようにシステム上の決まりきった判断に頼るのではなく、AIや、時にはあえて人の判断を活かすITのほうがマッチすると考えています。この考えが正しいかは今後明らかになってくることですので、本稿での議論はいたしません。ただ皆さまには、これまでのITはこれからも使えるものではなく、古いITがビジネスに合わないのであれば、新しいITに触れてみるべきだと考えていただきたいと思います。

 

 

③ITの役割が多様化したこと

 昭和のITに課せられたROIはコスト削減でした。ITを導入したら人員はどれくらい削減できるのか? というわけです。人手にかかる費用を減らすために、企業は一時的に大きな投資をしてでも大きなITシステムを買い、資産として長年保有してきました。

 一方令和のITのROIは、営業機会損失の削減、サプライチェーンの効率化、SDGsの達成(CO2削減、食品ロス削減、残業時間削減)など多様化しています。今後もITの役割は増え、また変化していくでしょう。

 そうなると、かつてのように多額の費用と長い時間をかけて大きなITシステムを買い、会社の物として十数年間持ち続けることは、必ずしもよいことではありません。むしろ、その時々の社会と自社の声に応じて、必要なときに必要なものをすぐに使いはじめ、不要になればすぐに手放せなければなりません。

 当社は一昨年ごろから、新たに「SaaS」型の製造業向けクラウドサービス群の製品開発、販売をはじめました。「SaaS」型のサービスの強みは、かつての社内システムのように多額の費用と長い時間をかけて買い、買ったら買ったまま持ち続けなくてはならないのではなく、比較的少ない初期費用ですぐに使いはじめられ、不要になれば即座に手放せることにあります。今後よりいっそう多様性と不確実性を増していく世界の中で、このタイプのサービスは間違いなく台頭していくものと私は考えています。

 

 

 以上、ながながと説明させていただきました。つまりは、先の読めない世界で生き残るためには、常に新しいものごとを理解していかなければならないということです。

 今年も少しでも多くのお客さまとお話し、最新のITとの適切な付き合い方をお伝えできるよう、精進して参ります。

 最後に、皆さまにとって、この1年が最良の年でありますよう。今年もよろしくお願いいたします。

 

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代表取締役社長 藤本繁夫 
この記事を書いた人

藤本 繁夫

株式会社シナプスイノベーションの社長をしています。
時空を超え、国境を超え、業界の常識を超え、びっくりポン!なアイデアを発信します。

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