クラウドサービス利用に当たっての契約関係の見取図 ~利用規約とは何か?ソフトウェア開発委託契約との関係は?~

出張!シナプス法務室, リスクマネジメント

株式会社シナプスイノベーション法務室です。

今回は、近時ますます導入が進んでいるクラウドサービスの法的ポイントとして、クラウドサービス利用規約の基本的な性格を簡単に確認し、クラウドサービス利用規約とソフトウェア開発委託契約の関係を整理できれば、と考えております。

クラウドサービスの利用規約とは何か?

クラウドサービスの利用にあたって、各クラウドサービス事業者から「利用契約」「利用規約」「利用約款」「提供条項」などの提示を受けたり、ホームページからダウンロードすることがあるかと思います。

上記のようなドキュメントをどのように呼ばなければならないか、といった法律上の定義があるわけではないのですが、各種法律書籍や雑誌、Web上での弁護士による解説等を参照する限り、「利用規約」と呼ばれることが多い、という印象です。

そもそも、クラウドサービスとは何か?

クラウドサービスやクラウドコンピューティングを定義することは、利用される技術やサービス形態、各論者の着眼するポイント等が異なってくるため、それこそ「雲(Cloud)をつかむような話」といわれてしまう事があります。

ただ、各種クラウドサービスの導入検討に当たっての前提としては、ひとまず「クラウドサービスの構築・カスタマイズに関する役割分担」を押さえておけばよいでしょう。これについては、以下のような米国国立標準技術研究所(NIST)のサービスモデル分類がよく参照されます1

クラウドサービス利用規約の法的性格

上記のクラウドサービスの利用は、従来型のソフトウェアの販売・請負と異なり、クラウドサービス事業者が提供する標準のサービスをいわば「レンタル」する形態となります。

すなわち、従来型のソフトウェアはユーザに完成した製品を「購入」いただく(=売買)、もしくはお客様の望まれるソフトウェアを「製作」する(=請負)ことを前提に契約関係を整理してきました。

これに対し、クラウドサービスの場合、多くの場合はパブリッククラウド上に構築されたサービスの中から、ユーザに利用していただくサービスを「選択」し、一定の期間の間ご利用いただく、といったサービスの提供形態となります。また、選択いただいたサービス内容も、ユーザのニーズ等を踏まえ変化することが前提とされています。

このようなサービスの利用に関しては、多くの場合、一定の仕様が確定していることを前提に契約不適合責任〔従来の瑕疵担保責任〕を負担する事が前提となる標準的な売買/請負とは異なる部分が大きいです。そのため、民法の定める他の契約類型に収まりにくい場合に「受け皿」となる準委任契約、と整理されることとなります。

この場合、ユーザとしては「利用するサービスの品質はどのように担保されるのか」が当然のご懸念となります。この点に関して、各クラウドサービス事業者は、利用規約等において、サービス内容の保証条項や、いわゆるSLA(Service Level Agreement)によって定めることで担保・保証することとなります。

クラウドサービス利用規約と
ソフトウェア開発委託契約の関係は?

上記で簡単に説明をしてきたクラウドサービス利用規約と、「情報システム・モデル取引・契約書」第2版に代表されるソフトウェア開発委託契約の両者の関係は、上掲の「クラウドサービスの構築・カスタマイズに関する役割分担」との関係で見ると、以下のようになります2

SaaS(サース)の場合、上記の役割分担との関係で見た場合には、アプリケーション部分についての構築・運用もクラウドサービス事業者に委ねることができる、といった点が魅力となります。

もっとも、クラウドサービスとは異なったユーザ毎の個別対応のためのアプリケーションをアドオン的にクラウドサービスの周辺に構築することや、他のシステム(既存システムや他のクラウドサービス等)とのAPI連携機能の開発、データ移行、サービス利用のための導入・運用支援等は、SaaSであっても別途発生しえます。その場合には、SaaSの利用規約と合わせて、別途発生してくる業務に関してはソフトウェア開発委託契約を締結することとなるでしょう。

おわりに-本稿のポイント

本稿のポイントをまとめますと、以下のようになります。

  1. クラウドサービスの利用規約の内容は、準委任契約として整理される。
  2. クラウドサービスの品質保証は、利用規約上の保証条項やSLAで行われる。
  3. クラウドサービスを利用するにあたり、「ユーザが構築・管理すべき」とされたもののうち、ベンダにその構築・管理を委託するものや、サービス外での開発・役務の提供は、ソフトウェア開発委託契約の締結が別途必要になる。

以上の点は、きちんと整理すれば「当たり前」のことかもしれませんが、ユーザにおいてクラウドサービスの利用を検討されるにあたり、意外に抜け・漏れが発生しがちなところでもあります(たとえば、導入コスト等を算出するにあたり、上記③を踏まえて導入・運用支援等のコストを踏まえておく必要がある、等)。

本稿が、クラウドサービス(弊社で提供させていただいているものとしては、生産管理支援サービス UMシリーズ、等)の利用の検討にあたり、参考になれば幸いです。

以上

▼注釈

  1. 総務省ICTスキル総合習得プログラム 講座2-2(PDFへ直リンク)P6を基に一部改変
  2. 前掲脚注1参照
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この記事を書いた人

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