人口減少社会で企業が生き残るためのIT投資のタイミング

経営 事上磨練, 働き方改革, 経営・マネジメント

シナプスイノベーション代表取締役の藤本です。

『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(河合 雅司著 講談社現代新書)という新書に、「人口減少カレンダー」という資料が掲載されています。
最新のデータを元に、2017年から2115年までに日本で起きる出来事を予測し、まとめたものです。

私は、とある経営者の会合でこの資料の紹介を受けました。
「少子高齢化による人口減少」という漠然とした言葉と比べ、具体的な年と事象が書かれているこの資料は、たいへんなインパクトがありました。

IT業界についても、“2019年にIT(情報技術)を担う人材の数がピークを迎え、人手不足が顕在化し始める。”とか“2030年にITを担う人材が最大79万人不足し、社会基盤に混乱が生じる”といったことが予想されています。

IT人材の不足は、もちろん私たちIT企業の経営に大きく影響します。
しかしそれだけではなく、ITを利用する一般企業にも深刻な影響を及ぼすのです。
今回のブログでは、人口減少時代の日本で企業が直面する課題について、ITの視点からお話したいと思います。

まず、これまでのITの歴史と、企業に及ぼした影響を簡単に振り返りましょう。

企業におけるIT活用は、主に大型コンピュータで、大量の紙伝票の集計を自動的に行うことから始まりました。
一般企業が業務をIT化する主な目的は、単純作業の機械化によって人件費を削減することであり、仕訳伝票やタイムカードを集計するために計算機センターを設立することが流行しました。

次に、大型コンピュータに代わって少し小型のオフィスコンピュータが主役の時代を迎えます。

注文から出荷に至るまでの業務を効率化し、取引コストを削減することがIT導入の目的でした。
またこのころ、つまりバブルの時代が終焉を迎える1995年あたりまでは、ハードウエアメーカーがIT業界の中心を担っていました。

やがてWindowsが登場し、IT業界はソフトウエアの時代を迎えます。
企業におけるコンピュータは、1人1台が当たり前になり、個人の営業資料作成や社内の報告書作成などにも使用されるようになります。
このころは、手書きの資料を用いるかプリンタから印字された資料を用いるかで、営業数字に明らかな差が出ていました。
コンピュータシステムを利用することそのものがブランドであったということです。
ITは単に自社の業務を効率化するためだけでなく、他社と業務を差別化するために導入するものになりました。

続いてインターネットの一般化、そしてバッテリーの性能の上昇によって、モバイルコンピュータが全盛の時代を迎えます。
それまで事務所にしかなかったコンピュータが、いつでもどこでも使用できる、辞書代わり、地図代わり、財布代わりのツールになりました。
ITの担う役割が、組織の業務の効率化から、個人の働き方の効率化へと変化したのです。
これが、つい先日までの私たちの日常でした。

そしてこれから先の時代、AIなどの性能向上に伴い、コンピュータは人間に使われる存在から、人間の仕事を代替する存在へと変化していくでしょう。
結果としてコンピュータ黎明期と同じ人件費削減という効果が予測されるのですが、削減対象はもはや単純作業だけではなく、高度のスキルを要する仕事も含まれています。

このように20世紀後半以降、企業はITの恩恵を受け続けてきました。
ところが私たちは、ITエンジニア不足の時代を迎えようとしています。
すると、ITの利便性を享受できる企業と享受できない企業の二極化が進むことが予想されます。

ITの恩恵を享受できない企業が利益を伸ばすためには、人件費などの原価を増やさざるを得ません。
つまり、業務効率化によるコスト削減・利益増大が望めず、働き手を増やすことで利益を得ることしかできなくなるということです。
しかし、人手が数多ある時代ならともかく、人材獲得が極めて難しい時代では、そのような業態の企業は売上獲得競争の波に乗り遅れます。

そもそも人口が減少するということは、多くの企業にとって市場の縮小を意味します。
市場縮小に対しての経営的な戦略は、シェア獲得であることは言うまでもなく、シェア(売上)を獲得できない企業は衰退の一途をたどります。
にもかかわらず、不足する人材を無理やりにでも獲得することでしか売上拡大を望めないとすれば、企業の存続は絶望的です。

このような事態を回避するためには、できるだけ早急にIT投資を行い、将来の人材不足・市場縮小に備えなければなりません。

当然のことながら、IT人材が不足してくる近未来にはIT投資にかかる費用の増大が予想されます。
オリンピック会場の建設予算が、工事関係者不足のための人件費上昇の影響を受けたのとまったく同じ状況です。
こうなってからIT投資を行おうとしても、到底間に合いません。ですから、早急な対応が必要なのです。

IT人材の不足、つまりIT投資費用の増大が顕在化するのは、1年あまり先の2019年とされています。
ですから少なくとも2年以内の投資判断が企業にとって急務であり、その時を迎えてから慌てて投資に踏み切っても、それは企業の成長ではなく延命のための費用となってしまうと私は予想しています。

人口減少社会で事業を継続するためのIT投資のタイミングは、今すぐそこに来ているのです。

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代表取締役社長 藤本繁夫 
この記事を書いた人

藤本 繁夫

株式会社シナプスイノベーションの社長をしています。
時空を超え、国境を超え、業界の常識を超え、びっくりポン!なアイデアを発信します。

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