「PR」って何の略?そもそもどういう意味?

Marketings & Systems, 経営・マネジメント

スケッチブックとソファが置かれた部屋の中、元FBI似顔絵捜査官の男性が、カーテンの向こう側にいる女性たちの似顔絵を2枚ずつ描いていく。

1枚は女性たち本人が自身の顔の特徴を説明したもの。もう1枚は、待合室でたまたま一緒になった赤の他人が、その人の見た目を思い起こして伝えたものだ。

できあがった2枚の似顔絵を並べて見たとき、女性たちは言葉を失う。

いずれの女性も、2枚目の似顔絵―つまり他人から見た自分―のほうが、明らかに綺麗で、幸せそうな表情が描かれていたからだ。

あなたは、自分が思っているよりも、ずっと美しいのだ。

・・・

これは、2013年にユニリーバ社の有名ブランド「ダヴ」が仕掛けたPR動画の筋書きです。

この動画は公開後1週間たらずで1,500万人以上の人に視聴され、今では億を越える視聴者がいるそうです。

けっこうウルっとくる動画です。知らない方はぜひ見てみてください。ブログの最後にURLを貼っておきます(※1)
公開から数年たった今、私がこのように皆さんに紹介しているということからも、このPR施策は大成功だと言えるでしょう。

「PR」は「パブリックリレーションズ」の略

ところで、「PR」という言葉。

よく聞く「自己PR」や「地域PR」などから推測して、なんとなく「プロモーション」かなにかの略だと思っている方もいると思いますが(私もそうでした)、実は「パブリックリレーションズ(Public Relations)」の略です。ご存知でしたか?

ではパブリックリレーションズとは何か。広報とか宣伝とは違うのか、という疑問にお答えするには、次の定義がわかりやすいと思います。

パブリックリレーションズ(Public Relations)は20世紀初頭からアメリカで発展した、組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団・社会)との望ましい関係をつくり出すための考え方および行動のあり方である。日本には第2次世界大戦後の1940年代後半、米国から導入され、行政では「広報」と訳されたのに対し、民間企業では「PR(ピーアール)」という略語が使われてきた。しかしその後「PR」は「宣伝」とほとんど同じ意味で使われるようになり、本来持っていた意味から離れてしまった。そのため多くの組織では、その職務を「広報」と呼ぶことが多くなっている。
ただ広報という言葉は、組織と社会あるいは公衆(パブリック)とのよい関係づくりという意味が失われ、組織の一方的な情報発信と受け取られがちである。パブリックリレーションズが本来持っていた〈よい関係づくり〉という点を忘れてはならない。

日本パブリックリレーションズ協会「パブリックリレーションズとは」より
URL:http://prsj.or.jp/shiraberu/aboutpr

「PR」とは「公衆とのよい関係づくり」のこと

このように「PR」とは、公衆とのよい関係づくり(のためのあらゆる施策)ということで、宣伝や広報よりも広い意味の概念といえます。

情報過多の現代では、マスコミやメディアに取り上げてもらうために「広報」活動をおこなったり、お金を払って「宣伝」活動をしたりするだけでは、自社(商品)の存在をお客様に届けるのが難しくなりました。

お客様が情報に対して厳しい選別を行うようになったからです。しかし、企業とお客様との〈よい関係づくり〉ができていれば話は別です。

日本の組織は歴史的に、本来の「PR」―よい関係づくり―が下手だと言われてきました。しかし今こそ「PR」について考えなおさないといけない局面になりました。

そして、本来の「PR」を行うためのヒントが、さきほどのダヴの動画です。

なぜこのような動画をダヴは作ったのか、わかりますか?

ダヴのせっけんやシャンプーとまったく関係のない内容です。

ダヴにとっていったいどんなメリットがあるのでしょうか。

答えは、「消費者の共感を得ること」です。

PR動画を見て、ダヴの掲げる「“美しさ”を悩みの種にするのではなく、自信の源になるような世界を築く」というビジョンに共感することで、せっけんやシャンプーを買うときに「じゃあダヴで」となるわけです。
(もちろん実際はもっと複雑な心理現象が働きますし、商品機能が消費者の基準をクリアしていることが前提なのは言うまでもありません)

ちょっと昔の「ハニワがぁ、有田焼になったって感じです」という日本のダヴのテレビCMも親近感がわきますが、こちらは商品の良さをやや直接的にアピールしているという点で、さきほどのPR動画と少しコンセプトが違います。

お客様の感情をゆさぶることが、現代のPR施策のキー

「共感」を狙ったPR手法は、ダヴ以外のテレビCMでもたびたび見られます。

商品のメリットをうたうのではなく、感動したり笑ってしまったりするストーリーのあとにちょこっと商品や会社名が出てくるようなCMが最近よくありますよね? たとえば、携帯キャリアや、自動車メーカー、清涼飲料水メーカーなどのCMです。

この「共感」をはじめ、驚き、危機感、といったコンセプトを打ち出すことが、お客様との〈よい関係〉を生み出すための、現代のPR施策のキーになります。

商品を買ってもらいたい人に「買う理由」を認識してもらうには、商品のアピールをするだけでは難しくなってきています。

その人の感情をゆさぶり、「自分ごと」だと思わせ、やっと人は動くのです。

※1 ダヴ リアルビューティー スケッチ | あなたは自分が思うよりもずっと美しい
https://www.youtube.com/watch?v=E8-XKIY5gRo

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長井
この記事を書いた人

長井 建(ナガイ タケル)

株式会社シナプスイノベーションのマーケティング担当。毎朝、嫁に寝ぐせを直してもらっている。
座右の銘は「仕事は遊び、遊びは仕事」。奈良の前方後円墳のふもとで育った。

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