なぜ「社風」は大切なのか

Marketings & Systems, 経営・マネジメント

「人間が火のおこし方を知る前、その集団には火守り人がいた。
人々は洞窟に暮らし、雷に打たれて燃える木を見つけると、持ち帰った。
洞窟では、その火が燃え続けるよう、見守る必要があった。
もし火が消えたら、次はいつ燃える木を見つけることができるか、誰にもわからなかったからだ。
火を見守るのは、部族の中で最も重要な人の役目だった。」

(ニール・ドシ、リンゼイ・マクレガー 著『マッキンゼー流 最高の社風のつくり方』より)

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良い社風をつくり、守ることは、遠い昔の「火守り人」のように重要な仕事だ、とサウスウエスト航空の元CEO、ハーブ・ケレハーは語りました。

サウスウエスト航空は、乗客を楽しませるジョークを交えた機内アナウンスで有名です。
最高の顧客サービスを提供するため、会社が従業員の独創性を尊重しているのです。
従業員、そして顧客、株主の満足度は、同業他社と一線を画すそうです。

他にも例えばスターバックス、アップル、オリエンタルランドなどの企業がすばらしい社風を形成していて、それによって高い業績を上げていることは有名な話です。

学者や専門家たちは、何年にも渡って、「社風」が会社の業績を左右することを証明してきました。
良い社風は幸せを呼ぶうえに、お金も呼び込むのです。

冒頭の一節の引用元『最高の社風のつくり方』では、「社風が良い」とはつまり従業員のトータルモチベーション(ToMo)が高いことだと定義します。

高業績を導く社風をつくるには、つまり従業員のToMoを高く維持するには、まず従業員に「何をするか」ではなく、従業員が「なぜ働くか」に着目しなければならないそうです。

労働の動機(なぜ働くか)は、シンプルに次の6つに分けられます。
すなわち、「楽しさ」、「目的」、「可能性」、「感情的圧力」、「経済的圧力」、「惰性」です。

そして、最初の3つは業績を向上させ、後の3つは業績を下げるものである、ということをニール・ドシらは多数の実験を重ね、証明しました。

(6つの動機を数値化し、係数を掛けて足し合わせるとToMo指数が算出されます。従業員のToMo指数が高い企業は業績も高いのです)

業績に1番良い影響をもたらすのは「楽しさ」です。

楽しさとは、趣味に夢中になるように仕事自体を楽しんでいるということです。それがもっとも業績を引き上げます。
会社は、まず仕事そのものの楽しさを従業員に理解させなければならないのです。

次に影響度が高いのは「目的」です。

目的とは、仕事の結果に価値を感じているということです。つまり、仕事自体は楽しくないかもしれませんが、仕事が社会に及ぼす影響などが自分の価値観に合っている場合です。
重要ですが、業績への影響度は「楽しさ」に劣ります。

次に「可能性」。それは仕事の二次的な結果が自分の考えに沿っているということです。

つまり、最終的に個人的な目標などにつながると予想されるからその仕事をしている、という場合です。

以下の動機は従業員のパフォーマンスを下げます。

「感情的圧力」は、罪悪感や羞恥心、他人の目などを気にして仕事をしている状態です。
さらに悪いのが「経済的圧力」、つまりお金のために働いているということです。
最悪なのが「惰性」で、特にやりたくないが今までやってきたからやっている、という状態です。

従業員の、“楽しさ、目的、可能性”を最大にし、“感情的圧力、経済的圧力、惰性”を最小にすると、個人のパフォーマンスが向上します。
それが社風となり組織全体に波及すると、業績が最大化するのです。

しかし、他人と比べて負けないように頑張ったり(感情的圧力)、お金のために仕事に打ち込んだりする(経済的圧力)ことが、なぜ当人のパフォーマンスを下げるのでしょうか。逆のように思えないでしょうか。

実は「パフォーマンス」も2種類にわけることができます。

ひとつは「戦略的パフォーマンス」、つまり計画を遂行する能力、もうひとつは「適応的パフォーマンス」、つまり計画から逸れても臨機応変に対応できる能力です。

感情的圧力と経済的圧力は、一時的に戦略的パフォーマンスを引き上げますが、適応的パフォーマンスは引き下げることが、実験で証明されているのです。
(プレッシャーを感じているときには、目の前の仕事をこなすことに必死になりませんか? 逆に新しいことをしようとはあまり思いませんよね)

惰性に至っては、何も生み出しません。

もちろん、戦略的パフォーマンスは悪で適応的パフォーマンスが善というわけではありません、両方のバランスを取ることが重要だということです。

しかし、人はつい戦略的パフォーマンス(計画遂行能力)を上げることばかり考え、適応的パフォーマンス(計画外のトラブル対応力)をおろそかにします。
予想外・計画外のことばかりの現代において、時代遅れな考え方だと言わざるを得ません。

火守り人が見守らなければならないのは、社風であり、従業員の「適応的パフォーマンス」なのです。

さて、ほとんど『最高の社風のつくり方』の受け売りになってしまいました。

素晴らしい本なので、気になった方は買って読んでみてくださいね。

・・・

弊社の社長は、「モチベーション」について語るとき、よく「壁職人の寓話」を例に出します。

あるところに、レンガを積み上げている3人の職人がいました。

1人目の職人に聞きました。「あなたは何をしているのですか?」
職人はぶすっとして答えました。「俺はレンガを積み上げているんだ」

2人目の職人に聞きました。「あなたは何をしているのですか?」
職人は答えました。「僕は壁を作っているんだ」

最後の1人にも同じ質問をすると、笑顔でこう答えました。
「村の皆が神に祈りを捧げられるように、教会を作っているんだ」

さて、この3人のうち最も高いモチベーションで仕事をしているのは誰でしょう。

もちろん答えは3人目の職人ですね。

教訓は、「目的を意識して仕事をすると自ずとモチベーションが上がる」ということです。

……果たして本当にそうでしょうか?

トータルモチベーションが最も高い職人なら、レンガを積み上げる仕事そのものがとにかく大好きなので、笑顔で「僕はレンガを積み上げているんだ」と答えるかもしれません。

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長井
この記事を書いた人

長井 建(ナガイ タケル)

株式会社シナプスイノベーションのマーケティング担当。毎朝、嫁に寝ぐせを直してもらっている。
座右の銘は「仕事は遊び、遊びは仕事」。奈良の前方後円墳のふもとで育った。

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