全ての不満の本質は「バグ」である

Marketings & Systems, 経営・マネジメント

端子の上下を何度も確認しないとうまく差し込めないUSB、どの照明に紐付いているのかわからず、手当たり次第にパチパチやらなければならないスイッチパネル、マニュアルなしでは操作方法が分からない電子機器。

皆さんは身の回りのそんな不親切なモノにイライラしたことはないだろうか。

目的のための動きを止めてしまうような製品は、そのデザインに「行為のバグ(※)」があるという。

製品の設計者は、自分よがりでなくユーザーのあらゆる利用シーンを想像し、デザインに「行為のバグ」がないか入念にチェックし、よりよい形を見つけていかなければならない。

(※:『問題解決に効く「行為のデザイン」思考法』(村田 智明 著)より)

・・・

ある会社の話だ。
社長肝入りの開発プロジェクトを経て、競合より優れた製品がついに完成した。
市場のニーズがあることは間違いない。
デザインに「行為のバグ」もない。
しかし、時がたてども売り上げが伸びる気配がない。

顧客が欲しがるモノは確かにここにあるのに、売れない。
いったいなぜだろうか。

原因は、営業部がそのモノの「売り方」を理解していないからだ。

営業マンは、たとえそれが良い商品だと分かっていても売り方が分からなければ売ろうとしない。
しかし、これは営業部の責任ではない。

組織の体質として、商品の「売り方」まで設計せずに
モノをつくってしまっているために、結果、営業が苦労しているという構図だ。

ものづくりに携わる多くの人たちは、たとえ技術者気質な人であろうとさすがにエンドユーザーのことは想像できる。
(あの人、あの企業に、この商品は売れそうだな)

しかし、そのエンドユーザーにモノが届くまでのフローや商品の認知の広まり方まで頭が回らない。
(この商品はどんな経路で売れていくのだろう)

それをあたり前にしてしまう風土が、この会社のような失敗を生み出す。

「売り方」を想像せずモノを作ってしまうことの本質は、不親切なUSBと同じように組織のあり方にもまた「バグ」があるということだ。
物を売る動きを止めてしまっている。それがこの会社の失敗の教訓だ。

組織の中では往々にして、こんな不満や文句が渦まく。

「受注が足りないのは営業の動きが悪いからだ」
「いや、魅力のない商品が悪いのだ」

「クレームが多いのは生産部がずさんなせいだ」
「おいおい、品質管理部のチェックが甘いからだろう」

「ものごとが前に進まないのは無駄な会議が多いのが原因だ」
「報連相が無いのが悪い」

それぞれの立場で、それぞれの人が愚痴を言う。

仕事をしていると、自分の思った通りにならないことはたくさんある。
むしろ思い通りにならないことのほうが多いかもしれない。

そんな時、「自分はせいいっぱいやっているのに!」と他人のせいにするのはたやすい。

しかし、ものごとが思い通りにならないとき、それは自分も含め組織のシステム(制度や風土)に「バグ」があるからだととらえなければ、解決の糸口は見つからない。

全ての不満の陰には「バグ」がある。

想像をめぐらせ、様々な視点で現状をとらえられない人に「バグ」を消すスイッチは見つけられない。
そしてその人の周りの状況が好転することはないだろう。

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長井
この記事を書いた人

長井 建(ナガイ タケル)

株式会社シナプスイノベーションのマーケティング担当。毎朝、嫁に寝ぐせを直してもらっている。
座右の銘は「仕事は遊び、遊びは仕事」。奈良の前方後円墳のふもとで育った。

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