人不足を解消するために -足元からできる現場改善-
2021年は一昨年に続き、コロナ禍でどなた様もすっきりとしない1年だったと思いますが、いよいよ2022年が始まり、気持ちを新たにジャンジャンバリバリとコラムを書いていきますので、引き続きよろしくお願いします。
3月に決算月を迎える多くの上場企業では、年が明けた今は第四四半期、いわゆる最終コーナーを曲がったところで、年度末に向かってお忙しくしておられることでしょう。一方、中小企業では12月を決算月としておられる会社も多々ございますので、そうした企業では、年末にバタバタと年度の締めを行ったあと、ひと段落して新たな気持ちで新年を迎えておられることでしょう。
ただ、年を跨いでなお、製造業を取り巻く環境に問題や懸念が多いことは、変わりのない現実かと思います。
一筋縄ではいかない人不足
問題の中でもとりわけ、人不足=労働力不足が、ここ数年、いよいよ深刻化してきています。具体的な問題を特集した新聞やインターネットの記事をよく読むようになりましたし、色々な製造業の方々からお話を聞かせていただき、ご提案を差し上げてきた中でも実感しているところです。
ただでも我が国の労働人口は減少していっているのに、コロナ禍の影響で外国人の方々が日本にやって来られないために、いよいよ人手不足になって十分な生産ができていない。労働力を確保するために海外に製造拠点を出しているものの、やはりコロナの影響で現地へ行けないのでコミュニケーションが十分でなく、業務がスムーズに進められない。にっちもさっちもいかないことがワサっと起こっていて、中堅、中小の製造業は特に大変な思いをされていると思います。
人手が確保できなければ製造ができない、つまり売上が上がらない、そうなると従業員に給料が支給できない、どこの社長さんも、それだけはあってはならないと考えて経営をされていますよね。
どうにもならないならば、もういっそのこと店を畳んでしまおうか、と思ってはみても、会社の資産+価値と借入とを比較して相殺できないことが数字で見えていたり、では設備を売却すればなんとかなるかというと売却額が思ったほどでなかったりで、簡単にはいかない。従業員がいるので事業を継続せざるをえない。ジレンマが目の前まで迫り、「何とか」継続していくしかない、「何とか」しようと腹をくくっている会社は少なくないと思います。
製造現場に人がいないなら、自動化を進めてスマート工場を目指す、というのが昨今セオリーのようになってきています。ですがそんな方針を立てられるのは限られた大手企業だけであって、中堅、中小の製造業では、製品や工程の特性上まだ自動化の技術が市場に確立されていなかったり、自動化するための機器や技術はすでに市場にあるが経済的に手が出せなかったりと、それぞれの事情で、そんなに簡単に解決できないのも現実ですよね。
今いる従業員の生活をどう守るかを考えると新年早々、気持ちが重くなる、だからといって、指をくわえて見ていては、今日明日で死にはしないにしても、ジリ貧になるのは見えている、と危機感を覚えている方々が、中堅、中小の製造業には大勢おられることでしょう。このコラムが、「何とか」しようとしている方に「これならできそう!」「おおっ、これなら行ける!」と気付いていただくきっかけになって、日本の製造業をもっと元気にできるものになったらいいなぁ、と最近つくづく思います。
足元からできる現場改善
さて、省人化、省力化の花形といえば、ロボットの導入ですね。メーカの事例紹介や、ネットやテレビで紹介される町工場の革新的な取組みでも、ロボットの導入がベースになっていることが多々あります。こういった事例では、自力でロボットを導入した、自作でIoTをやった、社内ですべてやった、そういった話が多いと思います。社内に電子機器に興味を持っている人がいたりすれば、何となくやれるかもしれませんが、そんなに上手い話はそうそうないですよね。そもそも、社内が疲れ切っていて、新しいことへの挑戦なんて、そんな情熱がどこから湧き出るのか?! という会社も多いと思います。
私は、いわゆるハイテク機器を駆使しなくても、新しいことに挑戦しなくても、我が国の製造現場には、まだ改善する余地があるように思います。決してハイテク機器や電子制御にアンチな訳ではありません。元々、今、最も売れている制御機器の1つを作っていたメーカ関係の出身で、自動化が進んだ工場へシステムを導入していたことがあり、とある超ハイテク産業の製造装置の開発や、制御基板の開発に携わってきた人間です。現在、市場に出回っている機器をどのように組み合わせて、どういう風に使えば、何ができるのかは知っているつもりです。ですが、中堅、中小の製造業の現場を拝見する中で、ここ数年、「自動化? ちょっと待って!」と、設備を導入して省人化するよりも先にすることがあると感じることが多くなりました。
あくまでも私の主観ではありますが、今や国内の製造現場よりも、かつて後進国とされてきアジア各国の製造現場の方が先進の技術を導入しており、我が国の製造現場は周回遅れに入ってしまっていると感じることが多々あります。これはバブル以降、物価が伸びず、海外に製造拠点を見出してコストを抑制してきた結果、アジアの国々には日本国内で確立された自動化設備が設置され、丁度テクノロジーの進歩の歩調と合わさって先進化した一方で、国内の工場が置き去りになってしまったという経緯から、致し方ないことではあります。しかし、2022年の現在、「状況がそうだった」と他責にしている猶予はなくなってきました。 多くの中堅、中小の製造業は、日本国内の経済が活況な「いい時代」に起業し、その後、暗くて長い「しんどい時代」を通り抜け、会社を、従業員を守りながら、何とかやってきたことでしょう。そんな企業の多くは、今、代替わりの時期に差し掛かっています。中堅、中小の製造業はオーナ社長が多く、そのご子息たちが、大学を出ていったん一般の会社に勤め、稼業を承継すべく戻ってきたというケースがよく見受けられます。古き良き時代が終わった今、事業を承継する若い世代の目の前には、くたびれた製造現場、自転車操業的な経営が横たわっているのではないでしょうか。
創業者から事業を承継なさった若い社長さんが、センサで情報収集して設備の見える化を実現、ロボットやAGVを使って省人化に成功、といった話はもちろんありますが、どこの企業でもすぐ真似できるとは限りません。そうした華やかな「二代目社長の成功」は大手のメディアに任せて、このコラムでは、もっと泥臭いところにフォーカスして、「何とかする」ことに協力できたらいいな、と思っています。
例えば、1970年代に自宅兼工場で起業し、事業の拡張に合わせて、町内の土地を買って工場を何ヵ所かに分散して建てたとか、狭い土地で何とか起業したが、思ったより注文が舞い込み事業がぼちぼち大きくなり、とはいえ建物を建て替えるほどではなく、社屋を増築また増築、階段やら中二階やらがあちこちにあるとかで、会社が物理的にいびつだから、ロボット、AGV、センシングで見える化だの自動化ラインだのは物理的に難しいという企業があります。稼業を継いだのはいいけれど、自分には電気電子の知識もないしIoTとか言われても、とか、社員はいい人たちなんだけど先進的なことに取組む人たちではないな、とか、途方に暮れている社長さんもいらっしゃいます。
大手のメディア、大手の電機メーカが紹介しているような取組みが、そのままできない、難しい、そんなこんなで困っている、という会社に一筋の光明が差すような情報を、このコラムに掲載していこうと思います。自動化がすぐに進まない状況の会社であっても、「今できること」をしっかりやって、体力を蓄え、それから大きなことへチャレンジできるように、少額の投資でシステムを育て上げていけるようなご提案やアイデアをお見せするのが今年のテーマです。
こう申し上げると、中堅、中小の製造業のことしか書かないの? と思われてしまうかもしれません。でも、大手の方々がご覧になると、今度はサプライチェーンの現実が見えてくると思います。どちら様もこの製造業コラムをご覧いただいて、仕事の糧としていただければ幸いです。
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