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食品製造業に求められること、 そのために必要なシステムとは?

更新日:2023年10月19日
食品製造業に求められること、 そのために必要なシステムとは?

「食の安全」、「食品ロス」、そして「原価管理」。食品製造業には、対応するべき課題がいくつもあります。
今回は、食べ物を製造する方々が日々どんなことに取り組んでいて、そのためにどんなシステムが必要なのかをお話します。

衛生管理とトレーサビリティ

食品製造業にとって、「食の安全」はなにより大切なことです。
これを担保するにはどのような取り組みが必要でしょうか。
当然、工場内の衛生管理は必須です。

2020年6月の改正食品衛生法施行により、2021年6月からはHACCP(食品衛生上の危害の発生を防止するために、特に重要な工程を管理するための手法)が完全義務化されました。
これからは、HACCPに沿ってPDCAを定期的に回していくことが必須となります。

ここでは、より効率的でお客様の負担を最小限にした、HACCP運用のポイントをご紹介いたします。

①重要管理点(CCP)を管理する

HACCPの12の手順の中に、「重要管理点(CCP)の決定」があります。

CCPは、「Critical(重要な)Control(管理)Point(箇所)」の頭文字をとったものです。
食品の加工工程で、食品の安全性が損なわれるような「危害」を防ぐために特に重要な管理ポイントを指します。
例えば、食品を焼いたり煮込んだりするときの温度が低かったり、異物が混入したりすると、食中毒の原因となります。

これが「危害」であり、加工の温度や異物混入の有無が「重要管理点」です。
重要管理点を決定したら、これに対して、管理基準(CL)を設定します。
重要管理点でこのラインをクリアできなければその製品は危険だと判断する、明確に計測できる基準を作るのです。

日々の加工はモニタリングされ、管理基準に基づいて安全性を判定されます。
HACCPを効率よく確実に実施したければ、工場内のシステムには、管理基準を設定し、加工をモニタリングし、モニタリングしたデータを評価できる機能が求められます。

しかし、紙に数値を記録する運用では、問題のある数値が記入されてもすぐには気づくことができず、ラインをストップすることが遅れ、結果的には食品ロスにつながってしまいます。

当社が提案している取り組みは、スマホやタブレットを使って、現場からリアルタイムで加工温度や異物混入の有無を報告する方法です。これによって、規定値からはずれた製品がつくられた際、自動でメールが通知される仕組みをつくることができます。問題が発生してから工程を止めるまでの対応スピードを上げることが重要となります。

②トレーサビリティを確保する

「食の安全」のために重要なことに、もうひとつ、「トレーサビリティ」があります。

原材料をいつどこからどれだけ仕入れて、いつどのように加工して、いつどこにどれだけ出荷したのか記録して、あとから辿る=トレースできるようにするのです。
もし出荷した製品について問い合わせがあったら、その製品がいつ、何からどうやって作られたのかを調べます。これを「バックワードトレース」と言います。

また、もし仕入れた原材料に問題があったことがわかったら、その原材料がどの製品に使われたのかをトレースできることも必要です。これを「フォワードトレース」と言います。
トレースする単位は一般的にはロットですが、モノによっては個体単位のトレースが求められることもあります。
牛肉がその典型で、全ての牛に個体識別番号がつけられ、消費者のもとに届くまで、その肉や加工品がどの牛から製造されたものなのか管理されます。

そのため、生産管理のシステムは「バックワードトレース」「フォワードトレース」ができなければなりませんし、個体のトレースを求められる食品を作っている製造業なら、個体の識別機能も必要です。

モノをムダにしない在庫管理

いまや「食品ロス」は世界的な問題です。

「日本でも1年間に約612万トン(2017年度推計値)もの食料が捨てられており、これは東京ドーム5杯分とほぼ同じ量。日本人1人当たり、お茶碗1杯分のごはんの量が毎日捨てられている計算になります。」(出典:農林水産省 aff 2020年10月号)
このうち、家庭ではなく製造・流通の過程でのロス(事業系食品ロス)が約半分強に上るそうです。
国はこの事態を改善するために、例えば次のような呼びかけを業界全体に向けて行っています。

「サプライチェーンにおいては、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例、いわゆる「3分の1ルール」があります。このルールのもとでは、賞味期間の3分の1以内で納品できなかったものは、賞味期限まで多くの日数を残すにも関わらず、行き場がなくなり廃棄となる可能性があります。このため、厳しい納品期限を緩和することは食品ロスの削減につながることが期待されます。」(出典:農林水産省 食品ロス削減に向けた商慣習見直しに取り組む事業者の公表(令和2年10月30日))

これは国として、業界として取り組んでいかなければならないことですが、一方、食品ロスの削減に向けて個別の企業にできることは、在庫管理と賞味期限管理の徹底です。

作りすぎによって過剰在庫を抱えると食品ロスの原因になりますし、経営にも負担になります。
とはいえ、在庫が足りなければ、販売機会をロスすることにもなりますので、適切な量を適切な時期に作れるように在庫管理をしなければなりません。
そのためには、原材料から完成在庫まで、今、どんなモノがどこにどれだけあるか、更には明日、明後日にどれだけ必要になるのかまで把握しておくことが重要です。

そして食品製造業では、これらのモノを管理する上で、賞味期限の視点が不可欠です。
この原材料はいつまで使えるのか。今作った製品はいつまでに出荷しなければならないのか。
これがあいまいで、今日加工しようと思っていた原材料が実は賞味期限切れだったとなれば、とたんに在庫が足りず機会ロスに繋がります。
まして、「実は賞味期限切れだった」すら把握できなければ、「食の安全」にまで影響しています。

そのため、在庫を管理するシステムに、入荷予定や製造予定を加味して未来在庫が照会できる機能や、モノごとに賞味期限を管理する機能が必要です。
食品製造業では、不定貫といって個々のモノごとに重量が異なる肉や魚なども扱いますから、在庫管理には様々な、痒い所に手が届く機能がいるのです。

ITでより安全確実な食品づくり

食品製造業が日々どんなことに取り組んでいるのか、それに対してITシステムはどんな貢献ができるのかという視点で見てきました。
ご紹介したような機能を兼ね備えたシステムがあれば、安全な食品を、より確実に効率よく世の中に送り出すことができるでしょう。

当社の「UM SaaS Cloud」は、こうした取り組みをサポートできるソリューションだと自負しています。
ご興味を持っていただけましたら、製品紹介ページもご覧ください。

SCさん
著者:SCさん

製造業のお客様にUM SaaS Cloudの導入を支援するコンサルタント。
お客様の課題を的確に把握し、最適なソリューションを提案します。
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