生産管理をクラウドにする意味とは?
はじめに
今回は、最近よく聞く「クラウド」での生産管理についてお話しようと思います。
そもそもクラウドって?
かつて、ビジネスでシステムを使うとなれば、「オンプレミス」と呼ばれる、サーバ、ネットワーク、ストレージなどのインフラそのものを自社で保有し、これを使って必要なシステムを構築する方式が当たり前の時代がありました。
現在も、このやり方を採用している企業は少なくありません。
これに対してクラウド、フルネームは「クラウドコンピューティング」と言いますが、これは周辺機器やインフラを自前で持つことはせず、必要なITサービスだけをネットワークを通じて利用する方式です。
一口にクラウドと言っても実はいくつか種類があるのですが、中でもイメージしていただきやすいのが、SaaS(Software as a Service/サース)と呼ばれる、ソフトウェアの機能をネットワークを通じて利用するスタイルのものだと思います。
オンプレミスのシステムを使うには、ハードウェアを購入する、ソフトウェアをパソコンにインストールするなどなど、事前にいろいろな準備が必要です。
一方SaaSでは、ハードウェアの購入も、ソフトウェアのインストールも不要です。
ソフトウェアサービスを提供する側が、そのサービスに必要なインフラを保有していて、ユーザはただ使いたい機能を、ネットワークを通じて使うだけでいいのです。
製造業が感じるクラウドへの不安
生産管理システムも、かつてはオンプレミスが当たり前でした。
そして、今ではクラウドサービスがいろいろと提供されています。ほかのたくさんのシステムと変わりません。
しかし、製造業にお勤めの方の中には、これまで社内のシステムでやってきたのに、急に外部のサービスで、しかも外部のネットワーク上で生産管理をすることに強い抵抗がある方も多々いらっしゃいます。
その背景には、なんといってもセキュリティーに対する不安があります。
製造業にとって、生産管理の情報は機密事項です。
この情報が漏洩しないか? 社外の人間にアクセスされないか? 心配になります。
オンプレミスの生産管理システムを使っている企業の中には、生産管理のサーバを外部ネットワークどころか社内のネットワークとさえもつながず、工場内のクローズな環境だけで運用しているところもあります。
クラウドは新しいサービスですから、使い勝手が変わるのも心配です。
例えば、ネットワークの帯域が気になります。外部のネットワークにつないだために応答時間が長くなる、なんてこともありえるのでは?
そんな怪しげなサービスを使うより、これまで親しんできたオンプレミスのシステムを使い続けたい。そのお気持ちはわからなくはありません。
製造業を取り巻く環境
ここで少しの間クラウドの話題から離れて、いま製造業を取り巻いている環境のことを考えてみましょう。
「原材料・部品生産→ 1次加工 →2次加工→ 物流→ 販売」
製造業はこの大きな流れ、サプライチェーンの中にいます。
モノが生まれてから消費者のもとに届くまでのすべてを自社でまかなっているのではなく、自分たちの仕事の前後には、仕入先、得意先があります。
そのため、ビジネスを進める上で、他社との情報の交換は絶対に欠かせません。
情報交換のスタイルは、時代とともに大きく変わっています。
得意先からの受注、仕入先への発注、外注先への加工指示、どれもFAX・電話が当たり前の時代がありました。それ以前には、もっと時間のかかるやり方をしていたこともあるでしょう。
ところが今では電子メールで、ほぼリアルタイムでやりとりできるのが当たり前です。
今ほど情報が速く流れなかった当時は、時間の感覚も今とは違っていました。
以前は1週間単位で管理すればよかったことが、今では、日単位、時間単位の管理を求められます。
生産計画は、かつては月単位で立てていたものですが、今では週単位。
受注予定も、かつては何月何日まで把握していればよかったですが、今では何月何日何時まで正確にわからなければ仕事になりません。
これからの生産管理に求められるもの
こうした時代の変化に応じて、生産管理システムに求められる機能も変わってきました。
以前は、自社工場の内部の管理ができれば十分でした。
外部とのかかわりは、仕入、入荷、出荷あたりが管理できれば足りました。
しかし、シビアな時間管理が求められる現在、得意先への納期を守るためには、自社工場だけではなく、外注先の進捗管理もしなければならなくなってきています。
外注先の作業がいつ終わるのかによって、自社の進捗予定も数時間、数分単位で変わってくるからです。
外部倉庫の在庫についても、いつどこに何がどれだけあるのか、リアルタイム管理が必要になりました。
在庫を自社倉庫から外部倉庫に移動したとたんに、何がどれだけあるのか、どれだけ増えたのか減ったのか、次の日にならないとわからなくなるのでは、いまの需要のスピードについていけません。
営業も、ますますスピード感が求められる時代です。
お客様からの問い合わせにすぐ正確に回答するために、例えば客先など自社の外でも在庫状況や製造進捗を確認したい、外出が多い営業社員はそんな風に考えているのではないでしょうか。
現代の生産管理システムは、以前から備えていた機能に加えて、外注先の工程管理、外部倉庫の在庫管理、社外にいる営業への情報提供などまで求められるということです。
生産管理をクラウドにするメリットは
ここで改めて、なぜ生産管理をクラウドにすることに意味があるのか? という話です。
オンプレミスのシステムで外注先や外部倉庫の情報を管理しようとすると、管理したい拠点ごとに、インフラの準備やシステムのセットアップが必要になります。
けれどクラウドなら、パソコンやタブレットなどの接続端末とインターネットがあれば、すぐにデータのやり取りを始めることができます。
管理したい外注先や外部倉庫が増えても簡単に対応できます。
営業担当者も、やはり端末とインターネットさえ使えれば、外出先で在庫や製造進捗を確認することができます。
でも、すぐ簡単につなげるということは、やっぱりセキュリティーに問題があるのでは?
いえいえ、クラウドの提供者は、ユーザの大切な情報を守るために様々な工夫を凝らしています。
今やクラウドのセキュリティレベルは大きく上がり、かつて「インターネットで情報をやりとり」で想像されたものとは比べ物にならなくなりました。
ネットワークの帯域についても同じことで、レベルは確実に高くなっています。
きちんとしたサービスを選べば、セキュリティーを確保したうえで、もっとスピーディーに、もっと正確に生産管理をすることができる。私はそう考えます。
クラウドはいまや十分、生産管理システム導入にあたって検討する価値のあるものになりました。
私たちシナプスイノベーションも、現代の製造業のニーズに合ったクラウドサービスを多数提供しています。
ご興味を持っていただけましたら、どうぞ製品紹介ページをご覧ください。
